FC2ブログ

Entries

♪No Woman No Cry

Live
Live

Bob Marley & The Wailers


もう十数年以上も前の夏、無職だった僕はエジプトにいた。
いわゆるバックパッカーってヤツだ。「地球の歩き方」を片手に。
カイロの喧騒に辟易してバハレイヤ・オアシスを目指した。クソ暑いおんぼろバスで片道8時間。隣に座った精悍な顔立ちの同じ年くらいの若い男が僕のウォークマンを取り上げ、流れていた音楽を聴いて笑みを浮かべた。流れていたのはボブ・マーリィ。男は“ノー・シュカール・ノー・チャイ”と「ノー・ウーマン・ノー・クライ」を替え歌にして歌った。それがアシュラフとの出会いだった。
それから一週間近くの間を僕はアシュラフや彼の仲間と共に過ごした。チャイを飲みスイカを食べ地鶏をさばいてかぶりつきジョイントを巻き砂漠の星を見ながら眠った。片言のアラビア語を教わり片言の日本語を教えた。アシュラフはエジプトの政策に怒り日本のふがいなさをなじった。イスラムの教えを熱く語り、信仰心のないみじめな日本人に世界の真理を語った。けど日に5回の礼拝は時々さぼってた。
アシュラフは車に置いたテレコでボブ・マーリィを聴きたがった。いっしょに「ノー・ウーマン・ノー・クライ」を“ノー・シュカール・ノー・チャイ”と替え歌にして歌った。それから「バッファロー・ソルジャー」や「ワン・ラブ」を歌った。僕の持ってきたボブのテープはアシュラフのものになった。実際のところテープ以上にウォークマンを欲しがってたけれど。

帰国後手紙を出した。数ヵ月後、砂にまみれたエアメイルが「宛先不明」で戻ってきた。それっきり音信不通。
日本の空からは、あんたとあの時一緒に見たほどの星が見えない。だからあんたが今見てる星空は僕には見えていないかもしれない。けれど、今もあんたがおんぼろバスの中で歌っているのが聞こえる気がする。

I remember when we used to sit・・・



もう泣かないで
覚えているかい?トレンチタウンの政府広場で、
よくふたりで座っていたね。
善良な人たちの間に偽善者どもがそ知らぬ顔して紛れ込んでいるのを
ふたりで眺めてた。
そんな中で出会った友人たちも、
ひとりまたひとりと闘いの中で倒れていった。
どんなに素晴らしい明日がやってこようとも
あの頃のことは忘れようがないさ。
けど、さぁ、涙をぬぐって。
もう泣かないで
俺のかわいい恋人、涙を見せないで
もう泣かないで

覚えているかい?トレンチタウンの政府広場で、
よくふたりで座っていたね。
ジョージーが薪に火をくべると、炎は一番中燃え上がっていた。
コーンミールのおかゆを作って、よく分け合って食べたっけ。
俺にはまだ二本の足が残されているから、
何があっても行かなきゃならない。

さぁ、もう行かなきゃ。

すべてはうまくいく すべてはうまくいくさ
すべてはうまくいく すべてはうまくいくさ
すべてはうまくいく すべてはうまくいくさ
すべてはうまくいく すべてはうまくいくさ

だから
泣かないで
もう泣かないで

(拙訳:No Woman No Cry)




スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/334-522e08c1

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

Calendar

07 | 2021/08 | 09
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

Gallery

Monthly Archives