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♪特別な季節 / 仲井戸麗市の夏

PRESENT#3
PRESENT#3/仲井戸麗市

夏という季節は、なぜかとても特別な感じがする。
例えば、春が過ぎていくのを淋しい気持ちで見送ったという記憶はない。秋や冬にしてもそうだ。
なのに夏だけは、過ぎ去っていくことがとても淋しく、またそのことをとてもせつなく、またはとても愛おしく思ってしまう。思い返せば、暑く、バテバテで、汗だくで、寝不足で、うんざりするようなことばっかりだったはずなのに、過ぎていこうとする夏の思い出は、なぜかキラキラと眩しく光り輝いているような感じがしてしまうのだ。
それは一体何故なんだろう。
夏をテーマにしたレコードやヒット曲はたくさんあって、それぞれに様々な気持ちを呼び起こさせてくれるけれど、今日取り上げたいのはこのレコード。
プレゼント・シリーズと銘打って95年から97年にかけて連続リリースされた、それぞれの季節に捧げるミニアルバムの夏の巻。チャボさんのソロの楽曲の中には、「夏」への特別な思いを歌にしたものがたくさんあるけれど、そんなエッセンスを凝縮した一枚だ。

チャボさんの歌う夏の情景は、どこかせつない。
それは、遠い少年の日の夏休みを思い出させてくれる。
それも、調子に乗ってはしゃぎまわり、無邪気に夢を語り、意地っ張りで生意気ばっかり言ってるくせに、どこか弱気で泣き虫で、ぽつんと独りぽっちでいるのが好きな少年。
ほんの少し、そこにかつての自分の姿をダブらせる。

歌詞カードには、チャボさんのこのアルバムに寄せたこんなコメントがあった。

「ティーン・エイジャーの頃から、夏のムードを感じさせてくれるRecordってのが好きだった。実際の夏そのものよりもRecordの中の夏の方が好きだった気もする。だってRecordの中の夏なら、ずーっとしまっておくことができるからだ。
太陽や女の子のまぶしさ、潮風の香り、つきぬける青空や夕立の気配なんてのを、好きな時にひっぱり出して感じられることができるのだ。
いつの夏も、どんな夏も、去り行くのを見送る頃は、なんだか少しばかり切ない気分になる。
で、でもなんてったってRecordの中の夏ならそれは…永遠の常夏なのだ…Yeah!! いったいどれだけの夏を僕らは迎え、どれだけの夏を見送れるのだろう・・・」

そうなのだ。
永遠の夏を求め続ける永遠の少年少女、それは誰の心の中にもきっといる。
だから、僕らは夏のムードを感じさせてくれる音楽が大好きなのだ。
そして、その音楽の向こう側に、自分自身の少年少女時代のうぶな気持ちをついつい重ね合わせてしまうのだ。
一度しか体験できない初々しい気持ちの象徴として、或いは、決して忘れてしまいたくない若き日に強く心に刻み込んだ誓いや願いの象徴として、それから、今の自分の自分らしさにつながる原点としての。
夏はやがて去るけれど、心の中の夏の日は、ずっとそこにある。
夏のムードを感じさせてくれる音楽は、そんな記憶をすぐに甦らせてくれる。

ちなみに、ハンモックに寝そべってギターを抱えるジャケットは、B.B キングのアルバム“the Jungle” のジャケットへのオマージュ。若い頃に心を震わせたブルースへのリスペクトと、ほんの少々のお茶目心。
チャボさんらしくて素敵だ。


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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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