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♪歌さがし / 夏川りみのうたへの愛

歌さがし~リクエストカバーアルバム~
歌さがし~リクエストカバーアルバム~/夏川りみ

朝晩の空気はずいぶん爽やかに涼しげになってきた今日この頃。
暦の上では立秋をとうに過ぎ、夏の軍隊は穏やかに後退してゆく。
やれやれという気分と同時に、なぜかほんの少しさみしい気分がふっとよぎる。

そんな昨今、はまって聴いているのが、夏川りみさんの名曲カバーアルバム『歌さがし』なのです。
彼女の声は、去りゆく夏を見送るようにほんの少しせつなくて、透き通ってきらきらとして、優しくて、しなやかで、穏やか。彼女の歌には、そんなとても心地よい何かが含まれている。夏の日の木陰でさわさわと吹くそよ風のような心地よさ、或いはよく冷えた硬質のミネラルウォーターで喉を潤したときのような心地よさ。

高音を裏声でごまかしたり、甲高いハイ・トーンで絞りだすような「歌が上手い」とされている歌手はたくさんいるけれど、りみさんのはそういう類の上手さとは少し違う。よく響くピアノのように、たおやかで澄んだ声のまま、声がどこまでも-空に吸い込まれていくように、或いは細胞の隅々に浸み込むように-響き渡ってくるのだ。それは、天賦の才であるだけでなく、その根底にある深い音楽への愛情、そしてその音楽を愛する人への愛情の成せる技だと思う。泉のようにあふれ出てくる音楽への愛、人の暮らしへの愛に満ちた眼差し。

一時期、日本の名曲をカバーする企画のレコードが相次いで発売されていた。大ヒットしたの徳永英明 VOCALISTシリーズを筆頭に、槇原敬之 や矢野顕子 、佐藤竹善 、甲斐よしひろ 、岩崎宏美 、山崎まさよし 、斉藤和義 。デーモン小暮 や中森明菜 やパフィー も出してたっけ。
カバー企画、というのは決して嫌いではない。中には売らんが為のあざといものや意図の理解に苦しむもののあるけれど、どんな人の歌をどう解釈して歌うか、というところにそのアーティストの“らしさ”がより際立つように思うからだ。りみさんのこのアルバムもそんな流行に乗った一枚のようにも思えるけれど、いや、そこはやはり実力が違う、と思わされてしまう。
りみさんは本当に、歌うことが大好きなのだろう。つい先日もNHKの「みんなの童謡」かなんかで「椰子の実」が流れていて、何の気なしにぼおっと見ていたらクレジットに「うた:夏川りみ」と出ていて、さもありなんと思ったのだけれど、演歌から島唄からポップスまで、本当になんでも歌っているし、歌いこなしてしまう。
ファンからのリクエストを元に構成されたというこのアルバムでも、元歌の良さに自分らしさをでしゃばらずにうまく合わせて、とても心地よく歌を響かせてくれている。
選曲はこんな感じ。

1. 時代  / 中島みゆき
2. 花咲く旅路 / 原由子 
3. 秋桜 / 山口百恵 
4. さくら(独唱) / 森山直太朗
5. 忘れてはいけないもの / コブクロ
6. こころ / 沢知恵
7. なごり雪 / イルカ 
8. キセキノハナ / Lyrico
9. 蘇州夜曲 (唱歌)
10. 少年時代 / 井上陽水
11. ‘S Wonderful (ジャズ・スタンダード)
12. 見上げてごらん夜の星を / 坂本九 
13. 小さな恋のうた / MONGOL800
14. デンサー節 (八重山民謡)
15. 花  / 喜納昌吉&チャンプルーズ

中でも気に入ったのは、コブクロの“忘れてはいけないもの”とモンゴル800の“小さな恋の歌”。惚れたはったの恋愛感情なんかよりももっと大きな愛を歌うのがりみさんの声には向いている気がする。
また、“花咲く旅路”なんかは名曲だけれどももっと歌唱力のある良く伸びる声の人が歌えばもっと素敵なのに、とうすうす思っていただけにりみさんの歌唱は正解!

ただ、全体的には全世代的な売りを狙いすぎたベタな選曲なので、もっといろんな歌をこの声で聴かせてほしい、と思ったりするわけで…「第二弾」ではぜひこんな曲を!!という曲を選んでみたのですが、さて、いかがなもんしょう?

1.明日に架ける橋  / サイモン&ガーファンクル
   多くの人がカバーする名曲だが、S&Gの清潔感は夏川りみ向き。
   アート・ガーファンクルの天使の声を歌えるのは彼女しかいない。
2.未来へ  / Kiroro
   母親への思慕を歌ったしっとり系バラード。
    りみさんの声は恋愛系よりふるさと親孝行系…なのでこれかな。
3.サヨナラColor / SuperButterDog
   永積タカシがハナレグミを演るきかっけになったという、SuperButterDog時代の名曲。
   淡々と健気で、けれど意志のはっきりした声で歌い上げてほしい。
4.春よ、来い / 松任谷由実  
   前作になかったユーミンの数ある作品から、 「ダンデライオン」や「赤いスイートピー」も考えつつ
   和風なこの唄を、しとやかに。    
5.ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー  / ザ・ビートルズ    
   ビートルズナンバーを何かと考えて、Let it beやLong and Winding roadではベタすぎるので。 
   この歌をいちごフラッペみたいにかわいらしく歌えばどんな感じだろうか、と。
6.だいじょうぶマイフレンド / 広田玲央名
   その昔、村上龍原作の「だいじょうぶマイフレンド」が映画化された際の主題歌。
   ・・・勇気、元気の湧き出るいい曲なんです。 安井かずみ&加藤和彦作品です。
7.FLOWER / Kinki Kids 
   アイドルソングにも名曲はある!埋もれてしまった名曲を高い歌唱力で聴いてみたい。
   この曲のポジティヴさや夏っぽいアレンジはよく合いそう。
8.ダイヤモンド / プリンセス・プリンセス
   はじけるような元気印の曲を一曲。
   例えば、これをレゲエ・ヴァージョンで演ったら良い感じなんだけどなぁ。
9.風になりたい / ザ・ブーム
   りみMeetsサンバ。
10.生まれ来る子供たちのために / オフコース
   佐藤竹善が素晴らしいカバーをしていたけれど、壮大な星空を感じさせる広がりのある歌。
   歌に“気”を込めることのできる歌い手を選ぶ歌だと思う。
11.満月の夕 / ソウル・フラワー・ユニオン
   沖縄っぽい名曲といえばこれ!
   この歌に限らず、SFUの泥臭い歌を、りみさんの澄んだ声で聴いてみたい。
   中川敬のがさつなヴォーカルではわかりにくい歌の機微や歌本来の良さがよくわかるはず。   
12.君と歩いた青春  / 風
   伊勢正三作品として「なごり雪」が取り上げられていたが、胸締付けられる感じではこちらが上。
   太田裕美もかつて歌っていて、そのかよわい歌唱も良かったけど、もっと伸びる声で聴いてみたい。
        ちょっとカビくさくなった古いフォークでも、りみさんが歌うと、新たな命が吹き込まれる気がする。
13.終章(エピローグ)  / チャゲ&飛鳥    
   シングルのB面でカバーしていた飛鳥涼の「伝わりますか」が艶っぽくてよかったので。
   チャゲ&飛鳥お得意の演歌的な、ちょっと古くさい別れ唄。誰かとデュエットで「男と女」でもいいな。
   演歌的で古風で艶っぽい、といえば、上田正樹の「わがまま」も捨てがたいけど。
14.タイム・アフター・タイム  / シンディ・ローパー    
   これも多くの洋邦の女性歌手が好んでカバーするベタ曲ですが、淡々と切ない感じで。
    ミニー・リパートンの「ラヴィング・ユー」とどっちにするか悩みました。
15.トゥ・マッチ・ペイン  / ザ・ブルー・ハーツ    
   ブルーハーツの名曲バラード。
   これも名曲を高い歌唱力で聴いてみたいという欲求。
16.奇跡-大きな愛のように- / さだまさし    
   有名は曲ではないけれど、大きな愛情を歌った名曲です。     
17.さよならの向こう側  / 山口百恵    
   阿木曜子&宇崎竜童コンビの、山口百恵引退前のラスト・シングル。    
   悲しいだけの別れじゃない、透明感のある声がよく合う歌だと思う。
18.リバティ  / 鈴木雅之    
   吉田美奈子作品。その昔、ソニーのコンポかなんかのCMだった曲。 
   ゴスペルっぽい雰囲気が〆にほしくて。  



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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