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♪I Shall Be Released


ライオンのいる場所

ライオンのいる場所 / 友部正人


友部正人の歌をちゃんと聴いたのは、大学を卒業する頃だった。
当時フォーク研究会に所属して歌っていた友人がよく「にんじん」や「空が落ちてくる」を歌っていて、僕はけっこう長い間ずっと彼のオリジナルだと思い込んでいた。そもそもその当時、友部正人のレコードなんてどこでも手に入らなかったし、所詮フォークだと思い込んでいたから興味もなかったのだ。

友部正人の歌は、一見とてもなめらかなようで、しかし一度口に含むとそのとてもザラザラした感触がいつまでも離れないような独特の苦味を持っている。
友部正人の歌は、とても中毒性が高い。
時々意味もなくむやみやたらと聴きたくなる。
特に、なぜだかよくはわからないけどなんだかシャキッとしないなんだかなぁ感がずるずると後を引くような日には。
友部正人の歌は、高揚させてくれたり、勇気付けてくれたり、励ましてくれたりはしない。
ただそこにいて、俺はこうだよ、ととぼけている。
けれど、下手にむやみやたらと励ましたり元気出せとか言ってくる歌よりも、そんな歌がそばにあるほうがとても安心する。そういう歌をブルーズと呼ぶのだろう、と最近なんとなくそう思う。


友部正人の91年のアルバム『ライオンのいる場所』収録の“I Shall Be Released”のカバー。
ほぼ直訳のこの歌詞、正直何が言いたいのかよくわからない。けど、とてもブルーズだと思う。

I Shall Be Released

 君が言うようにはならないね
 近くなったとはとても思えない
 思えば俺がここまでやってきたのも
 みんな君のおかげなのさ
 俺の光を見つけたよ
 西から東へと広がってゆく
 あんなふうにいつか俺も
 自由になれるのさ

 君を守ってくれる壁はどこだい?
 君はとても落ち込んでいるのさ
 でも俺はどんな守りの壁よりも
 高いところにいる自分が見たいんだ
 俺の光を見つけたよ
 西から東へと広がってゆく
 あんなふうにいつか俺も
 自由になれるのさ

 悲しい群衆の中に俺といて
 「自分じゃない!」と叫ぶ奴
 「俺ははめられたんだ」というあの声が
 一日中耳から離れない
 俺の光を見つけたよ
 西から東へと広がってゆく
 あんなふうにいつか俺も
 自由になれるのさ



先週末のこと。
京都のとあるライヴ・ハウスで、昔からの友人たちのバンドのライヴがあった。
奴等が18、19の頃から知っているのだから、かれこれ四半世紀、というつきあいになる。
あの頃ストーンズですらまだ25周年を迎えてなかったのだから、時の流れの速さというのは空恐ろしいものだ、まったく…などと苦笑いしつつ。
奴等もまた奴等なりの言葉で、奴等なりの“I Shall Be Released”を演っていた。
奴等の音を聴きながら、俺もまたいつか、あんなふうに自由にならなくちゃ、と思わされてしまった。




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コメント

[C369] Re:

kingさん、こんばんは。
まったく、深読みすればするほどよくわからなくなる、けどとても抗えない魅力がある。そんな歌がたくさんあります。
深読みすればするほどよくわからない、けどとても抗えない魅力がある…ということこそが、実は人生そのものなのかも知れないなぁ、などと友部正人の歌を聴くと思ったりするのです。
あ、このフレーズ、本文で使えばよかったな(笑)。

[C368] Re

ミモザさん、こんばんは。
「地球の一番はげた場所」、僕も好きです。
友部正人さん、とにかくすごい詞を書く人です。ただの言葉遊びなのか、とても深い意味があるのか、意味を考えようとするとなんだかよくわからなくなってしまうけど、例えばシュールな絵画のように人生の真実を描き出しているような。歌は決して上手ではないし美声でも渋い声でもないですが、なじむとこびりつきます。

[C367] Re:

まりさん、こんばんは。
友部正人、確かにイイ男です。シュッとした美男子、声や歌のイメージとは少し違いますよね。
つい先日まで“I Shall be Released”の弾き語り映像がYoutubeにあったのですが、アップしようと思ったら削除されていました。残念。

[C366]

僕も正直、友部さんの言いたい事がなんなのかってよくわからない時があります。必死に文章の裏を探ろうとするのですが、結局わからないまままた聞いてしまうという繰り返しです。そう、これが友部さんの歌の中毒なんですよね。特に意味もなく聞いてみたくなる。「まるで正直者のように」を何度聞いた事か。

>けれど、下手にむやみやたらと励ましたり元気出せとか言ってくる歌よりも、そんな歌がそばにあるほうがとても安心する

友部さんの歌は距離感で言うとすごく近く聞こえてくるアーティストだと思います。キャロル・キングとかの密接な距離感じゃなくて、不思議とそこにいるみたいな。「にんじん」収録の「ふーさん」はそんな友部さんのイメージをよく表してると思います。
  • 2011-02-22 23:43
  • king
  • URL
  • 編集

[C365]

まだちゃんと聴いたことがないんです。

真島昌利マーシーの初ソロアルバムでカバーされていた「地球の一番はげた場所」がとても好きなのです。
「そっか友部正人か」と思ってから、※※年。

いいきっかけになるかもしれません^^

[C364]

こんにちは goldenblueさん♪
私もここ数日ザ・バンドの「I Shall Be Released

」を聴いてましたよ

友部正人は「金もないが悩みもない」をよく聞きました。たしかLPで一枚あったと思います。
顔がyoutubeで見れるようになって案外イイ男だったのねえ。
来月の18日は再び京都の街を荒らしにいきます(笑)
  • 2011-02-22 16:57
  • まり
  • URL
  • 編集

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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