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♪The Promise

Promise
The Promise / Bruce Springsteen


ブルース・スプリングスティーンの『The Promise』。
このレコードには、秋の終わり、冬の始まりという印象がある。
聴いたのがちょうど去年の今頃、冷たい風が吹き始めた頃だった、ということもあるかもしれないけれど、アルバムの核をなす“Racing in the Street”や“The Promise”といった曲がとても重くざらざらした感触があるからだと思う。
冷たい夜の街をコートのポケットに手をつっこんでうろうろさまよっているような。

このレコード、ご存知のとおり正規のアルバムではなく、75年の『Born To Run』から78年の『The Darkness On The Edge Of Town』の間、契約問題ですったもんだしてアルバムを出さなかった時期にレコーディングされていた楽曲を、リマスターされた『The Darkness…』や当時のライヴ映像と共にボックス・セットで発売されたものの一部。パティ・スミスとの共作“Because The Night”やサウスサイド・ジョニーが演っていた“Talk To Me”、ポインター・シスターズの“Fire”などすでに聴き馴染んだ曲も収められている。
スプリングスティーンが一番カッコよかった頃のアーカイブ、ということで色めきたって購入したものの、実は聴いてみての印象はなんだかとてもしっくりこないものだった。少なくとも期待していた、熱くエネルギッシュで疾走感にあふれた“ロックンロール・プリズナー”としてのスプリングスティーンの姿はそこにはなかったのだ。
所詮はお蔵入りもの、つまらない買い物だったなとほったらかしていたのだけど、なんとなく冬の始まりに聴いてみたくなって改めて聴いてみて少し印象が変わった。
とても重い印象があったのだけれど、実はとてもポップな曲がたくさんだったのだな、と。
Gotta Get That Feeling ”“Save My Love”“Ain't Good Enough For You ”あるいは“The Little Things (My Baby Does)”、いずれもとてもポップで、キュートというかプリティというかファンシーというか、いわゆる60年代初頭のガール・グループのヒットナンバーみたいな曲がぞろぞろ。もちろんスプリングスティーンが演るのだから、どこかその独特の陰りはあるのだけれど、冬の街にキラキラ光るクリスマスの飾りみたいにポップでキュートだ。最高!とまではいわない、けど、これはこれでなかなかええやん!と、、、。

ブルース・スプリングスティーンという人にはどうしても求道者的なイメージがありその言動や行動一つ一つにもとても深い意味があるようにとられがちで、実際にそういう側面もあり、自身の行動をとてもはっきりとセルフ・プロデュースしているのだけれど、一方で実はとても優れた作家でもあるのだろう。
このアルバムに収められたフィル・スペクター風のポップでキュートな曲や60年代のR&Bヒット風の曲など、スプリングスティーンにならいくらでも作れたのではないだろうか。ある程度のパターンに沿って作っていけば、70点程度の楽曲ならそう難しいことではなかったような気がする。
けれど、この時期のスプリングスティーンはその手癖で作った70点の楽曲を良しとしなかった。
前作『Born To Run』でスターダムにのし上がったスプリングスティーンには、その次に出すアルバムで自分がどんなアーティストとしてこの先評価されるのかがよくわかっていたのだと思う。60年代風のポップなR&Bは自分自身のルーツだしとてもステージではとても盛り上がるけれど、次の作品でそのような楽曲を発表することでそんな楽曲ばかりを求められるアーティストとして評価されたくなかったのではないか。結果、スプリングスティーンは、出来上がった70点台の曲をすべて一度捨てた。そして3年ぶりに発表された『The Darkness…』は、時代の暗がりをえぐり出すようなとてもヘヴィなアルバムになった。
聴きながらそんなことを考えたのだがどうだろう。



ある程度のパターンに沿って手癖でできちゃうある程度の出来栄えのもの。
毎日の仕事の中で、つい「まぁそんなもんかな。まぁまぁならええやん。」と思っている自分がいる。
一方で「なんだかなぁ、それじゃまるでおもしろくない。」と感じている自分もいる。
欲しいものは、もっと手応えのあるもの。さらっと表側をなぜただけじゃなくて、奥の底の方まで手をつっこんでひっつかんできたようなもの。
ただし、それを手にするためには生半可ではない気合いと労力が必要なこともわかっている。
それを引き受けるだけの心づもりはあるのか?
「さぁ、どうなんだ?答えはアンタ次第だぜ。」とスプリングスティーンが問いかけてくる。

あぁ、いかんいかん。
スプリングスティーンを聴くと、いつも内省的な気分になってしまう。
スプリングスティーンの声が、音楽が、僕を心の内側にひきずりこんでいくのだ。
スプリングスティーンが大好きだった理由はその魅力だろうし、また、普段あまり聴きたくないと思ってしまうのもまた同じ理由による。
「俺はただ、楽しくやりたいだけなんだよ。」と僕。「本当の楽しさというものは、物事を深く突き詰めた中から生まれてくるものじゃないか?」とスプリングスティーン。
まぁ、いいや。答えは自分次第だ。
そのことは、他ならぬアンタから教えてもらったんだからな、Mr.ブルース。




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コメント

[C820]

非双子さん、こんばんは。
ネブラスカはあまり聴く機会が少ないですねぇ。どうも荒涼としすぎてて凍えそうで。でも聴き直すとかなりしみるかも。
「TRACKS」というお蔵入り音源集に、ネブラスカセッションで録音されたという弾き語り版のボーン・イン・ザ・USAがあって、これは深くしみました。
  • 2011-11-29 20:51
  • goldenblue
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[C819]

ううっ・・・"Nebraska"しか持ってない!
でも、スプリングスティーンの原点だと思ってます。

カセットテープが音源らしいけど魂はこもってると思う。



  • 2011-11-28 22:16
  • 非双子
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[C818]

リュウさん、毎度です。
今日も中途半端なくもり空で、気温も中途半端でセーターを脱いだり着たりの繰り返し、どうせならちゃんと寒くなって~って感じでした。
この煮え切らない感じがやたらスプリングスティーン日和、もうちょっとちゃんと寒くなれば、あったかいソウルやガンガンのロックンロールが恋しくなるはずです。
  • 2011-11-28 21:22
  • goldenblue
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[C817]

今晩は♪♪ブルースのこのアルバムは聴いた事ありませんが、この時期に聴きたくなる、内省的になるのは、わかりますね!!
でも、それでも、この時期になると聴きたくなる、それがボスなんですよね。
心の片隅にあるイノセントを突いて来るんですよねー♪
  • 2011-11-27 21:29
  • リュウ
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[C816]

ezeeさん、こんにちは。
40代も半ばになってくると、ある程度のことは一定のバターンで処理できちゃうようになりますね。
そのことは別に悪いことではないと思うのですが、ときどき何だかなぁって気分にもなります。特にスプリングスティーンなんかを聴くと。
ザ・プロミス、リヴァーがお好きなら気に入ると思いますよ。大きな期待をしなければ、きっちり70点以上の出来です。
  • 2011-11-27 12:32
  • goldenblue
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[C815]

う~ん、深い問題ですね。手癖で半分以上、妥協して仕事してるなぁと思うと余計にです。

しかし、こういうアルバムあったんですね。ザ・リバーが一番やと思ってましたが、これは聴いてみたいですね!

[C814] Re:

haTshさん、こんばんは。
一番好きなボスのアルバム、それはもちろん『Born To Run』です。
二番目は『The Wild,the Innocent and the E Street Shuffle』、三番目が『The River』。
このベスト3は長いこと不動で『Darkness…』はその次ですね。

この『The Promise』、編集がイマイチというか、ポップナンバーとバラッドがいったりきたりしているのが散漫な印象の原因でした。
曲順を入れ換えて、アップな曲を前半に、スロウな曲を後半にまとめると、まるで『The River』のように聴けますよ!

  • 2011-11-26 22:06
  • goldenblue
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[C813] haTsh

goldenblueさんこんにちは。僕もThe Promiseはピンとこなくてほったらかしにしてました。

こういう風に人様のブログを読んで、ライブラリーを再発見するのは嬉しいですね。ところでgoldenblueさんが一番好きなボスのアルバムはどれですか?

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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