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◇看護助手のナナちゃん

ナナちゃん 
看護助手のナナちゃん / 野村知紗

エッセイや小説と違って、まんがでなきゃ表現できない世界ってあると思う。
まんがはそんなに読む方ではないのだけれど、好きなまんがはけっこうあって、毎号欠かさず読んでいるのは「ビッグコミック・オリジナル」。
中でも心惹かれているのは、野村知紗さんの『看護助手のナナちゃん』。
最近やっとコミックになったので、買ってきた。
泣いた。
どうも最近、涙もろくていけない(笑)。

看護助手のナナちゃんの病院での日常の様々なエピソードを描いた、一話がたった2ページのショートコミック。
出会う人々は、いわゆる“いいひと”ばかりではない。
認知症だったり糖尿病だったり末期のガンだったり脳梗塞で下半身麻痺だったりで、患者としてはわがままな人ばかり。無茶なわがまま言ったりぼやいたり嘆いたり文句言ったり嘘ついたりズルしたり、人は弱ったり病気になったりしたとき、本性が出てしまうものなのかもしれない。多分、生きることに精一杯になったときには本性が露わになるものなのだろう。
こう書くとなんだか暗く重い話のようだけれど、そうでもないのだ。
主人公のナナちゃんの人柄や、根っこのところにずっと流れている人が生きることへの肯定的な目線のおかげで、とてもほんわかほのぼのとしている。しんみりもするけどその後に残るものはとてもさわやかで、そしてじわっと心が温かくなる。
人はみんなとても弱くて、人の営みは悲しくて愚かだ。
でもだからこそとても愛おしい。
そんなことを思う。

現実の世界だって、誰もが“いいひと”ばかりじゃないし、“いいひと”を演じてばかりもいられない。誰がどうみたって“いいひと”だなんて評判がある人は、きっとめちゃくちゃ無理してるか、どこか心が病んでるかだ(笑)。
弱くて愚かでいいのだ。
わがまま言ったりぼやいたり嘆いたり文句言ったり嘘ついたりズルしたりもしながら、泣いたり笑ったり喜んだり悔しかったりしみじみしたり意を決したりする毎日を愛したい。
誰もから“いいひと”と思われようとすると、人生は途端にしんどくなる。
目の前の、日々をいっしょに生きている人たちから、時々“ええとこあるやん”と思ってもらえるくらいでじゅうぶん、ということにしておくことにしよう。





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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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