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♪冬のはじまりの

冷えこんできたなぁ。
朝はすっかり吐く息が白いし、夕方はもうあっという間に日が暮れている。
そして、夜には夜風が身に沁みる。
もう11月も末だもの、当然といえば当然のことなのだろうけど、さも当たり前のような顔をしてやってくる冬がなんだかとても恨めしい。
いつぞやも書いたかもしれないが、寒いのは苦手なのだ。
血の巡りが悪くなる。肩や頚が凝る。朝、目が覚めてもシャキッとしない。
どこか本能的に「エサのない冬は冬ごもりをしなさい」と催眠術を囁かれているような気分のまま、実際冬ごもりなどできるわけもなくエサが落ちている見込みがなさそうな野原をとぼとぼと歩いているクマのような気分になってしまうのだ。

akiko
akiko / 矢野顕子


矢野顕子さんの2008年の作品“akiko”は、なんだか冬のはじまりの気配がする音楽だ。
どんより曇った空からひっそりと雪が舞い降りてくるような演奏で始まる“When I Die”。
いつもは朗らかで包容力にあふれた矢野さんの歌もどことなく控えめ、いつになくブルージィで、冬の薄い色の空や少し力をなくしたお日様のようだし、ピアノの音もどこかひんやりと冷たくきりっと尖った印象がする。
“Evacuation Plan”“The Long Time Now”“Song for the Sun”と、静かで重いテーマの曲が続き、5曲目はなんと、レッド・ツェッペリンのカバー“Whole Lotta Love”。
まるで和太鼓のようにどどんどどんと鳴るドラムはジェイ・ベルロウズ。
季節はずれの雷のように遠くでフリーキーに鳴っているギターは、奇才マーク・リボー。
基本たった3人での演奏なのに、いや、だからこそか、音楽にはとても濃密な空気が充満している。
穏やかで、同時にとても獰猛で、ゆるやかで、同時にとても張りつめた緊張感がある。
その、穏やかさと獰猛さ、ゆるさと緊張感の入り混じった感じが、とても冬のはじまりっぽい気がする。
これからやってくる長く暗い時期をやりくりしなくちゃという不安と覚悟が入り混じったような感じ、とでもいおうか。

一曲目“When I Die”は英語で歌われるのだが、こんな歌だ。

 わたしがしんだら あなたはきづく
 ときおり わたしがほほえんでいたこと

 わたしがしんでも だいじょうぶなのよ
 ときがすぎれば なみだもかわく
 
 ゆるしてほしいの
 あいしてほしいの
 ほっとかないで
 あなたになりたい
   

ずしんと沁みる。
心の中を冷たい風がゴゥと吹く感じ。
ただ、それだけでは終わらないのが矢野顕子さんのすごいところ。
最終曲では、ファンキーなリズムにのせてこんな風に歌いきってしまう。


 いっしょけんめい育てた子も帰ってこないし
 あふれるほどの酒も金もあら、どこ行ったの?
 楽しいときをありがとう どうもありがとう

 目に見えるもの みんな変わるし 涙も忘れる
 欲しがるものは みんな変わるし 笑って見送る

     (変わるし)

冬ははじまるけれど、これくらいのど根性があればきっと大丈夫。
むしろいっそ、早くもっと寒くなればいい。
一冬を越せるくらいの薪の蓄えくらいはきっと持っているはずだから。



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コメント

[C235] Re:

名盤さん、こんばんは。
このアルバム、今までの矢野顕子さんのアルバムとちょっと毛色が違っていて不思議な魅力を感じます。全部聴いてるわけでもないけど。
ライヴ、いいですね。レポートを楽しみにしています。

[C234]

このアルバム持ってるけど、あまり聴きこんでいない。内容が気にいらないわけではなく、その頃あまり音楽聴くモードじゃなかったから。
でもちゃんと聴きます。
12月には久々にライヴにも行く予定です。

[C229]

リュウさん、こんにちは。こちらこそしばらくご無沙汰で・・・。僕もめっちゃ低血圧です。エンジンかかるまで時間かかります(笑)。
矢野顕子さん、あの独特の感じはきっと生理的な好き嫌いも激しいと思いますし、アルバムによってもずいぶんやっていることが違うのですが、この盤はロック好きにもお薦めできます!


[C228]

ご無沙汰しましてすみません・・・。

寒い朝は本当に・・・苦手です、自分も・・。

血圧低い(100前後~70位)の自分のボーっと具合、ヤバいです・・・苦笑

朝の立ちあがりに最近はJazz聴いたりしてますが、この方も良さそうですね!

矢野さんは通ってきてないので、何とも言えませんが、大貫妙子の昔の感じはすきなんで、Tryしてみますね!

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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