暑い。ざぁっと激しい雨が降ってその後また蒸し蒸し。ビール飲まずにゃいられない。 図書館でたくさん本を借りたので片っ端から読んではいたのだけれど、本当におもしろい本っていうのはやはりなかなかないものだなぁ。エッセイの類はまぁそこそこ楽しめるけれど、小説はどうも…。などと考えていて、自分があまり本を読まなくなっていた理由がわかった気がした。 若い頃は、乾いた草が水を欲しがるようにいろんな本を読んだ。本を読むことは、つまりは自分の存在そのものがとても不安で、その不安が一体何なのかの答えや或いは処方箋を探すような行為だったのだ、と今になって思うのだけれど、小説がいまいち楽しめないいうことは、つまりいまや不安になってなんかいられない年頃なのだ、ということなのだろう。 小説家という人たちは、一般人にはない想像力でもって精神の遠いところへ旅をしてその報告書を持って帰ってくる人たち。人類がどれだけ進歩してもなぜ生きるのかなぜ死ぬのかということが解明されない以上「不安」は人類の基本的課題であって、小説家の取り扱うテーマの多くはやはり「不安」の形なのだ。そして一握りの素晴らしい小説は人をポジティヴにするけれど、ほとんどの駄作は「これがあなたの不安でしょ。」をスケッチして見せるだけに留まって解決策を用意しない。 少なくとも今は、不安になっている場合じゃない。やるしかない、あるがままを受け止めるしかない。一度不安になったら最後、足がすくんで歩けなくなってしまう。 さぁ、その点、音楽はすごい。 音楽は人を不安に陥れない。 不安を煽り立てたり掻き立てたりもするけれど、最終的には躍らせてしまう。舞い上がらせてしまう。 一歩をちゃんと踏み出させてくれる。 エモーションをレスキューしてくれる。 Emotional Rescue/The Rolling Stonesそんなわけで、ビールを飲みながら、ストーンズを聴いている。
ファンキーな“Dance!”や、ロッキンな“Summer Romance”や、ブルージィな“Down In a Hole”や、ソウルフルな“Emotional Rescue”の入ったこのアルバム。
ストーンズはやっぱりすごいと思う。
全部わかった上で、「で、あんたはどうすんの?」って笑っている。
音楽の力を知っている。
どうすごいのかを語ろうとして言葉にしようとしても、やはりとても陳腐な言葉しか浮かんでこない。説明しようとすれば本が一冊かけるくらいの言葉が必要だ。
でも、キースのギターのワン・フレーズ、ミックのシャウト一発、チャーリーのドラム一発で、どんなに文字数を尽くしても絶対に得ることの出来ないエモーションを音楽はくれるのだ。
I will be your knight in shining armour
Coming to your emotional rescue
Riding across the desert on a fine Arab charger
(Emotiomal Rescue)
今夜私は輝く鎧の騎士となって
あなたのエモーションを救いに行こう
アラブの馬に乗って砂漠を渡ってゆこう
エモーショナル・レスキュー。
理論は大切だし、正論や理屈は必要だ。けれど、それらはエモーションをレスキューしない。
音楽は、エモーションをレスキューしてくれる。
や、音楽だけじゃないな。
例えばおいしいものを食べたとき。旨い酒を飲んだとき。大好きな人を抱きしめたとき。
脳みそだけじゃない、五感で直接入ってくる満たされた感覚はエモーションをレスキューしてくれる。
まだまだ続いていくツアーの日々をちゃんとこなしていくためにはエモーションのケアが大切。
Down In a Holeしたときにはエモーションをレスキューしてくれるものにしがみつくべきだ。
だって、“Life just goes on and on getting harder and harder” ってミックが歌ってる。
まだまだずっと続いていくんだから。
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“Black&Blue”からの4枚はどれも大好きなんですが、あえて一番を選べばやっぱり“Emotional Rescue”なんですよ。
この時期のストーンズ、確かに朝の元気さや夏のにおいがしますね。♪起きろよ、キース、表へ出て何か新しいこと始めようぜ!なんて、くそ暑い朝に出勤するときにピッタリかもしれません。今日から夏休みですが、夏休み明け初日はコイツで気合い入れていくこといしようっと!