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U2 VS Big Country

golden(以下g):「80年代というのは、プロデューサーの存在がひときわ持ち上げられた時代でもありました。」
blue(以下b):「それぞれのプロデューサーによってはっきりしたサウンドがあって。バンドの個性よりもプロデューサーの個性の方がはっきり出るようなことがけっこうあったな。」
g:「まぁ、良くも悪くも。」
b:「スティーヴ・リリィホワイトのカンッって硬質な独特のドラムの録り方とかな。」
g:「スティーヴ・リリィホワイトといえばU2ですね。」
b:「『闘(WAR)』はけっこう衝撃的やったわ。こんな硬派なバンドは当時見当たらんかった。」
U2 / War (1983)
 
g:「83年のUSフェスティバルだったっけ、ボノがステージで白い旗振り回して歌うの。」
b:「あれ、かっこよかったなぁ。」
g:「熱血っていうかね、音から噴き出すような熱さがすごかった。」
b:「“Sunday Bloody Sunday”とか“New Years Day”とか、社会的なメッセージが強くあって。」
g:「軍隊がデモをする市民を殺害した北アイルランドでの血の日曜日事件や、ポーランドの民主運動を歌ったと言われてますね。」
b:「正義感に満ちた高校生としてはな、ああいう社会の欺瞞や不正を暴くような熱さには持っていかれたねぇ。ロックって本来こういうもんやろ、と。」
g:「チャラチャラした音楽にキャーキャー言ってる場合じゃないだろ、と。」
b:「いや、ほんまに。」
g:「よっぽどチャラチャラしたのが気にいらなかったんだね(笑)」
b:「まぁ、そういう年頃やったんや。」

g:「ボノの熱さや、鋭利に研ぎ澄まされたエッジのギターがU2のサウンドの肝だけど、リズムもかっこいいよね。」
b:「あれはスティーヴ・リリィホワイトの功績なんやろうなぁ。空間が広くて硬質なスネアの特徴的なエフェクトはもちろんなんやけど、ベースも硬くて立ってるねんな。」
g:「スティーヴ・リリィホワイトが注目されたのはやっぱりそういうリズムの立て方だったからね。」
b:「出世作といえばXTCの『Black Sea』とかピーター・ガブリエルの『Ⅲ』、どっちもリズムが硬くてよく響いてる。」
g:「ベースの音ってこんなにかっこいいんだ、っていうのはU2で初めて意識したかも知れないね。」
b:「たった3人の音とは思えんほど立体的やよな。」
g:「最新型のロック・サウンドを聴いてる、って実感があったよ。」
b:「次のアルバムでプロデューサーがブライアン・イーノに代わって、なんかありゃりゃって思ったけどな。」
g:「あれはU2の音じゃなくてスティーヴ・リリィホワイトの音だったんだ、ってそのとき初めて気づいた。」

g:「U2はアイルランドの出身。政治的なバンドといえば、オーストラリアからは後に政治家になるピーター・ギャレットが率いるミッドナイト・オイルなんかも同時期にブレイクしてた。」
b:「ああいう政治主張を含んだロックっていうのもパンクの影響なんやろな。」
g:「80年代初頭のイギリスは政治も経済の停滞が続いていて、いろんな不満が溜まっていたんだろうね。あの当時、イギリスの辺境地域からかっこいいバンドがいっぱい出てきてた。」
b:「俺、U2よりもビッグカントリーの方が好きやったわ。」
Big Country / The Crossing (1983)
 
g:「ビッグカントリーはスコットランドの出身。」
b:「ギターとヴォーカルのスチュワート・アダムソンは元々スキッズというパンクバンドを演ってたらしいな。」
g:「ケルト音楽のバグパイプ風のギターがね、これはすごいと思った。」
b:「シンセやなくてギターでこういう音を出してまうっていうのがな。」
g:「音楽としても、性急にたたみかけるというよりは、雄大な感じで。」
b:「青筋立てて叫びまくるんやなく、もっと懐が深くて力強い音やな。」
g:「スコットランドの大平原を汽車が煙を吐いて走っていくような光景が浮かんでくるよね。」
b:「『兼高かおる世界の旅』かよっ!」
g:「いや、そこは『世界の車窓から』かよ、でツッコむべきでしょ。」

b:「で、このアルバムもスティーヴ・リリィホワイトのプロデュースやねんな。」
g:「U2ほどではないけど、ドラムの音は特徴的だし、ベースが空間を自在に動き回っているよね。」
b:「“In A Big Country”のビデオ観たら、ベースが黒人でびっくりした覚えがあんねんけど。」
g:「トニー・バトラー、出身はロンドンらしいけど。」
b:「意外とファンキーっていうか、リズムが立ってるねんな。」
g:「ビッグカントリーっていうバンド名はそもそも西部劇映画『大いなる西部』の原題『The Big Country』にちなんでいるそうで、アメリカへの憧れがあったバンドなんだろうね。」

b:「ほんま好きやってんけどなぁ。ええバンドやった。」
g:「この曲のブリッジのところに“I'm not expecting to grow flowers in the desert/But I can live and breathe”っていうフレーズがあって。砂漠の中で花が開くことを期待してはいないけれど、僕は生きて、呼吸をしているから、っていう。
b:「ええフレーズやなぁ。」
g:「でも、スチュワート・アダムソンは自殺しちゃったんだよね、確か。」
b:「“Stay,Alive!”って歌ってたのにな。」
g:「U2がその後『Joshua Tree』をリリースして世界的なバンドになっていったのとは極端に対称的な。」
b:「ブレイクしだした当時って、どっちのバンドも同じような感じっていうか、U2の方がむしろ稚拙というか未熟な感じやったわ。」
g:「その分、デビュー以降もいろんな音楽を吸収していったんでしょうね。」
b:「U2にとってのこの『War』は、キャリアの序章でしかなかった。」
g:「一方のビッグカントリーは、デビュー作がキャリアのピークっていう。」
b:「この当時、まさかこの後、U2があんなにビッグなバンドになるとは思いもせんかったなぁ。」
g:「グラミー賞最多受賞とか、ノーベル平和賞候補とか、あっちこっちの国で勲章もらったりとか。」
b:「勲章をもらうようなバンドってどうなん、って思うけどな。なんか胡散臭い。」
g:「いやいや、40年にも亘ってトップバンドで居続けるっていうのは並大抵のことじゃないと思うよ。」
b:「まぁそうなんやけど、俺は“Stay,Alive!”って歌いつつ自殺しちゃうような方にロックを感じるけどな。」
g:「いやいや、死んだらダメでしょ。」
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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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