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Miseducations of Laulyn Hill

1990年代を代表するソウル/R&Bのレコードとして、ローリン・ヒルのこのアルバムをチョイスしないわけにはいかない。1998年グラミー賞で11部門にノミネートされ5部門を受賞したヒット・アルバムではあるけれど、作られたエンターテイメントではないザラザラした感触があって、90年代に始まったヒップホップ・ソウルの完成形のようなアルバムだ。

学校の授業風景のようなイントロから、ロウファイなリズムに乗ってドスのきいたラップを投げつける“Lost Ones”、一転して伸びやかでソウルフルな歌声を聞かせるシングルヒット“Ex Factor”、カルロス・サンタナの哀愁のスパニッシュなギターが聴きものの“To Zion”、グラミー賞でベストR&Bソングを受賞した“Doo Wop(That Thing)”と、インパクトのあるナンバーが続々。このアルバムがリリースされた頃はヒットチャートの新しい動きなんてまったくチェックしていなかったにも関わらず、これはリアルタイムでゲットして、よく聴いていたのだ。

一番魅力を感じたのは、声だろうか。

90年代に歌姫として君臨していたのはマライア・キャリーだったりジャネット・ジャクソンだったり、もちろんすごい歌い手ではあるんだけど、サイボーグのようなテクニカルさというかプロデュースされつくした完璧さ故のスキのなさがどうにも楽しくなくて。それはアン・ヴォーグから連なるSWVやTLC、後にビヨンセを輩出するデスティニーズチャイルドにしても同じこと。そういった歌い手とはそもそも出どころが違うような、もっと粗っぽくて野性的な声質、何かを伝えようとするはっきりとした意志を感じる歌い方。

そもそもThe Fugeesというオルタナティブなヒップホップグループのメンバーなんだからああいうトップ・エンターテイメントとは出自が違うとはいえ、ラップのライミングにしてもいわゆるラップの型をそのままコピーするのではないオリジナリティがあった。

 

The Fugeesでの“Killing Me Softly With His Song”に続いて、意表を付きつつしっくりとハマるカヴァーをしてみせた“Can’t Take My Eyes Iff You”。原曲はフランキー・ヴァリだけどローリンが参考にしたのは80年代のボーイズタウンギャングのヴァージョンだろう。こういったカヴァーのセンスの良さとその歌への解釈の向こうには、大いなるブラック・ミュージックへのリスペクトが感じられる。

「誰々と何々に影響を受けてミックスしたらこんな音になりました」風ではなく、黒人として女性としての自らの出自、その背景にある黒人としての民族の歴史、女性の抑圧と解放の歴史を実際心に刻み込んだ上で、先人が伝えてきたメッセージのバトンをしっかりと受け継いでいるように感じるのだ。

そしてそれを自分自身のメッセージとして伝えようという志が、彼女の音楽を豊かにしているのだと思う。







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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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