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Africa To America/The Sounds Of Blackness

 

約40名近くの大所帯のクワイアによる重厚で荘厳な混声コーラスが圧巻の存在感を示すサウンズ・オブ・ブラックネス。伝統的なゴスペル・クワイアを、ただ伝統を踏襲するのではなく、売れっ子プロデューサーと組んでコンテンポラリーでダンサブルなグルーヴとミックスすることで、ゴスペルをアフリカ的ルーツに立ち返った解釈でモダンに蘇らせたと言えるだろう。



アルバムのサブタイトルは「The Journey Of The Drum」と題され、アフリカからアメリカへと連れてこられた奴隷たちの苦難の歴史がテーマだ。
アルバムはアフリカン・パーカッションから始まり、やがて荘厳なコーラスへと移っていく。
そこから一転、ヒップホップ的なグラウンドビートに乗せて、ゴスペルコーラスとアン・ネスビーのアレサ・フランクリン張りのシャウトとの掛け合いの応酬がかっこよくて。
タワーレコードの試聴ブースでここまで聴いてこりゃーすげえぇと思ってカウンターへ持っていった記憶がある。


そもそもはミネソタ州セントポールにあるマカレスター大学の学生よって1969年に結成されたグループがルーツなんだそうで、1971年からキーボード奏者のゲイリー・ハインズがミュージカル・ディレクターとして参加することになり、サウンズ・オブ・ブラックネスと名乗るようになった。
幾度かレコード・デビューの話もあったそうだが、当時はネガティブなイメージを持たれていた「ブラックネス」という言葉をグループ名から外してほしいというレコード会社からの要請を彼らは頑なに拒否したためレコードのリリースに至らなかったというエピソードがあるらしい。
そういう話からも、ゴスペルのみならず、スピリチュアルやブルースやジャズやソウルを含めた黒人音楽を、民族の誇りとして敬意を持って表現していこうという意志が伺える。


最初の奴隷がアフリカからアメリカへ連行されたのが西暦1500年頃のこと。やがてこの奴隷貿易はイギリスを中心にヨーロッパ白人とアフリカ各地の支配層によって制度化され、1807年の奴隷貿易廃止までの300年の間に約1200万人ものアフリカ人がアメリカへ運ばれたと言われている。
その苦難の歴史の中で音楽が育まれた。民族にとっての負の遺産が実りをもたらしたというとなんだか皮肉なことではあるけれど、すがるよすがのない奴隷たちが生きていく上で、音楽というものが大切な役割を果たしたのだろう。
何も持たない奴隷たちが生んだ音楽。何も持たないからこそ、その歌の力、声の力、人の思いが結集したときの力に満ちている。
結局のところ音楽の深さは思いの深さと強く連動するのだろう。
思いが響く音楽だから、聴いた人の心が動く。思いを遠くまで届かせたいという気持ちが表現の源泉で、強く深い思いをわかりやすく伝えることができたとき、その表現は飛距離を伸ばすことができる。
アルバムを改めて聴きなおしながら、そんな表現活動の原点に思いを馳せたのでした。





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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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