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Voodoo/Dirty Dozen Brass Band

アメリカは広い。
今でこそ50州は一体であるようなイメージがあるけれど、実は地域によってその歴史は幾分異なっている。
1867年に併合されたアラスカ州や1898年に属州になったハワイ州は言うに及ばずだけど、テキサス州はスペイン領・メキシコ領から独立国の時期を経て1845年に合衆国に参加しているし、ニューメキシコ州やカリフォルニア州がメキシコから併合されたのは1848年で、これらの地域は1776年にアメリカが独立してから70年近くの間、異なった文化圏だったのだ。

ニューオリンズのあるルイジアナ州も元々はスペイン領で、フランス領を経て1812年に合衆国に売却された歴史があり、アングロサクソン系のアメリカとは異なった歴史的背景を持っている。
元々カリブ海の窓口の港として最大の奴隷市場があった港町。
フランス占領下では、アメリカでは禁止されていたドラムの使用が許されていたなどの違いから、ニューオリンズではアフリカ文化の残存が他の地域より多かったそうだ。
また、1800年のハイチ紛争でハイチからの移民が大量に流入し、アフリカ源流の呪術的宗教であるヴードゥーを持ち込んだということもあり、これらのことから独特の文化が醸成されていたのだそうだ。

やがて、工業生産力を高め国内産業保護のために関税を引き上げたい北部都市と、奴隷制度による綿花栽培やタバコ栽培の原料輸出に依拠した自由貿易を推進する南部の対立は南北戦争に発展。1861年から1865年まで続いた戦争が終わったあとには、軍楽隊でお払い箱になった楽器がたくさんニューオリンズの市場に出回ったそうで、奴隷制から開放されて自活することを余儀なくされた黒人たちの中に、これらの楽器でミュージシャンになるものが出て来たことから、ニューオリンズでジャズが生まれた。
もちろんその音楽には、ニューオリンズならではのリズム感や、カリブやハイチを経由したアフリカ文化が色濃く残されていた。



そんな19世紀末〜20世紀初頭のニューオリンズ音楽の魅力をそのまま復興させたようなバンドが、ダーティー・ダズン・ブラス・バンドだ。



タイトル曲“Voodoo”は、ヴードゥーっぽい怪しいリズ厶に管楽器群が怒涛の勢いでたたみ掛けてくる。



バンドの基礎は、19世紀末にバディ・ボールデンやキッド・オリーやキング・オリヴァーらがプレイしたであろうブラスバンド的なアーリージャズのスタイルだ。

ドラムはマーチングバンドの編成を模してスネアとバスドラは別々で、低音を支えるのはスーザフォンというチューバをマーチングバンドで持ち歩けるようにした楽器。
そしてそこに、ニューオリンズで冠婚葬祭の行進で用いられたというセカンド・ラインのリズムやファンクのグルーヴがミックスされる。



ボビー・ウーマックがいたヴァレンティノスの“It's All Over Now”のカヴァーはDr.ジョンを中心に据えて、いかにもニューオリンズっぽいジャンクでミニマルなファンクになっているし、まだ存命だったディジー・ガレスピーをゲストに迎えたジャズや、当時尖ったジャズをプレイしていたブランフォード・マルサリスと演ったファンキーなグルーヴまで、盛りだくさんの演奏は、ニューオリンズ流幕の内弁当みたいだ。
何より古い伝統に敬意を払って掘り起こしつつもただそのまま演るのではなく、同時代的なグルーヴ感を取り込んでいるのがカッコいい。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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