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Shake You Down/Gregory Abbott

80年代の半ばという時代は日本ではバブル景気への突入期。
なんだかお洒落で浮かれたものがあっちこっちで幅をきかせ、ネアカ・ネクラ、マルキン・マルビなんて言い方で明るくゴージャスであることが正しいとされた時代だった。

この時期、ブラック・ミュージックはブラコンの最盛期。
ライオネル・リッチーやテディ・ペンターグラス、ピーボ・ブライソンを筆頭に、ルーサー・ヴァンドロスやジェームス・イングラム、カシーフといった実力者に加えて、フレディ・ジャクソン、ジェフリー・オズボーン、アレクサンダー・オニールからボビー・ブラウンに至るまで、雨後のたけのこの如くいろんなシンガーが、いずれもパリッとしたスーツに身を包んでキラキラしたアレンジでのっぺりした歌を披露していた。



グレゴリー・エイボットもそんな中の一人で、世間的には “Shake You Down”だけの一発屋的な扱いかもしれないけれど、なぜかこの人だけは大好きでよく聴いていた。
マーヴィン・ゲイ・マナーのソフトで温かい声がいいし、アルバムもよく練り込まれてバラエティー豊かで、その他大勢ののっぺりしたブラコンシンガーたちとは全然違うものを感じたのです。



1曲目、花が開くようにゆるやかで美しい“I Got The Feelin' (It's Over)”から始まって、“Say You Will”、軽やかでポップな“ You're My Angel”、大ヒットした“Shake You Down”。



ゆるいけれどリズムはしっかり立っていて、80年代ブラコン独特の打ち込みでもソウルフルだし、ベースなんかはけっこうブリブリ来るし、ギターもキリッとリズムを刻んでいる。
ファルセットを多用したソフトな歌い口を基本としながらも、時折出てくる渋いシャウトがまたえげつなくかっこいい。

アルバムのB面は 一転、ファンキーな“Magic”。


それから、穏やかなミディアムのリズムの中で、グイグイと盛り上げていく“Wait Until Tomorrow” 、打って変わってのんびりしたレゲエのリズムの“Rhyme And Reason”。
作詞作曲はもちろん、プロデュースも本人で、クレジットによるとドラムとキーボードも本人だ。

これだけの才能がありつつ、玄人受けではなく万人にわかりやすいポップで親しみやすい音づくりができるところもすごい。音への魔法のかけ方を熟知している。
作品それぞれは緩急自在で何でもこいの幅の広さ、細かいところまで行き届いた作り込み方とひとつひとつの水準の高さには職人技のこだわりが感じられる。
しかも小手先の技術だけじゃない、魂というか、思いがちゃんと伝わってくる。

そしてラストのスロウ、“I'll Find A Way”がまたグッとくる。


80年代ブラック・コンテンポラリーの美味しいところでコーティングしつつ、ソウルのトラディションをしっかりと継承した素晴らしい作品だった。









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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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