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Private Dancer/Tina Turner



惜しくもこの5月に亡くなられたティナ・ターナーが1984年にリリースした『Private Dancer』。
このアルバムを敢えて選んだのは、リアルタイムで初めてちゃんと聴いたブラック・ミュージックのレコードだったという大変個人的な理由によるものです。

当時ヒットしていたブラック・ミュージックのアーティストといえば、マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチー、プリンスあたりだったか。そのあとホイットニー・ヒューストンが出てきたんだったか。クール&ザ・ギャングやニュー・エディションもヒットしてたか。
当時の僕は、なにしろ中学生のときにRCサクセションに衝撃を受け、その後A.R.Bやアナーキーにハマりまくっていた高校生だったから、あの手のチャラチャラしたポップミュージックや世間で大ヒットしてる洋楽なんかはむしろ忌避すべきものとして、そんなのを聴いてキャーキャー言ってるクラスメイトたちを覚めた目でみるフリをしていたのだ。
とはいえもちろん興味がないわけではない。
背伸びしたい年頃、最新の流行はちゃんと抑えておきたい。
ティナ・ターナーを聴いてみようと思ったのは“What's Love Got Do With It”がヒットしていたからで、動機としてはクラスメイトたちと変わりはしないのだけど、まぁ背伸びして誰も行かない方向を敢えてチョイスするというのは高校生の頃にはありがちなことで。



最初の印象は「ソウル」ってこんな感じなのか?ロックとそう変わらんやん、という感じ。
今となれば、ティナ・ターナーという人そのものがR&Bというよりはロックのフィールドでロックのカヴァーをいっぱい演ってた人だと知っているのだけど、当時はそんなことなど知る由もなく。
ただ、存在感がすごいな、と思った。
例えばマーク・ノップラーが参加していた“Private Dancer”という曲。静かに淡々と曲がすすむのだけど、サビに来たときの盛り上げ方がすごい。



それからビビッたのはビートルズの“Help”のカヴァーだった。元気なロックンロールの“Help”を、実にヘヴィに、それこそ歌詞にある通りの♪誰か助けてくれ、という悲痛な叫びをそのまま歌ったようなアレンジにまず驚いた。元歌にある辛さを生々しく激しく表現するティナの歌の力にぐいぐいと引き込まれた。後で知ったんだけど、この曲だけは元々クルセイダーズのアルバムにティナがゲストで歌ったものの再収録で、タイム感がアルバムの中で妙に異質なんだよね。
あぁ、ソウルっていうのはこういうことができる音楽なのだな、と感動、いや感動というよりは感心したのだった。



今、改めて聴いてみて疑問に思うのは、これはそもそもソウルなのか?ということ。
音楽的にはそれぞれのパーツはほぼロックのイディオムで構成されていて、もちろん元をたどれば黒人たちのリズム&ブルースなんだけど、黒人音楽というよりは白人たちがプレイしたブルー・アイド・ソウル的なフォーマットで黒人のシンガーが歌っている、という感じがする。

前年にポール・マッカートニーのアルバムにスティーヴィー・ワンダーがゲスト出演して“Evony and Ivory”を歌ったり、デヴィッド・ボウイがナイル・ロジャースのプロデュースで“Let's Dance”を歌ったり、ダリル・ホール&ジョン・オーツが“Rock'n'Soul”を標榜したり、そうやって白人の音楽と黒人の音楽の垣根が取り払われようとしていたのが80年代初頭という時代だったのだろう。
このあとくらいだったか、ジャクソンズのアルバムにミック・ジャガーが参加したりもしたし、マイケルといえば『Thriller』ではエディ・ヴァン・ヘイレンもギター弾いてたんだったっけ。
ティナ自身もこのあとデヴィッド・ボウイと“Tonight”を、ブライアン・アダムスと“It's Only Love”をヒットさせたということもあった。

ティナ・ターナーのロック的なシャウトとモダンなブルー・アイド・ソウル的サウンド。しかもアメリカンではなくイギリス寄りの泥臭さの薄いサウンド。
どっぷりど真ん中のソウル/R&Bではないにしろ、この時代を象徴するブラック・ミュージックのひとつの形としてとてもわかりやすいアルバムなんじゃないだろうか。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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