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Cut The Cake/Average White Band

60年代〜90年代のソウル/R&Bをピックアップして時代を追ってその変遷をフォローしているこのシリーズ、いわゆる広義のブラック・ミュージックと範囲を広げて、ジャズやブルースからもR&B的と思うものも取り上げていますが、基本は皆、黒人アーティストだ。
ローリング・ストーンズの例を挙げるまでもなく、ブルースやR&Bは白人たちの間でも深く浸透し、白人によるソウルな作品もたくさん生まれている中で黒人アーティストだけを取り上げるのもいかがなものかとも思ったりするけれど、やっぱりストーンズにしろラスカルズにしろ、或いはエリック・クラプトンにしろジョニー・ウィンターにしろ、どっぷりブラック・ミュージックというよりは、白人側からのアプローチであり、R&Bに強い影響を受けたロックと言ったほうがしっくりくる。

ところが、白人プレイヤーでありながら、ソウル/R&Bとしか括れないバンドがこの時代に出現した。
スコットランド出身のアヴェレージ・ホワイト・バンドだ。



メンバーは、ヴォーカル・ベースのアラン・ゴリー、ヴォーカル・ギターのヘイミッシュ・スチュアート、ギターのオニー・マッキンタイア、ホーンセクションとキーボード、そして初代ドラマーロビー・マッキントッシュの後任として加入したスティーヴ・フェローン。今もセッション・ドラマーとして活躍するフェローンは黒人ではあるけれどイングランドの出身なんだそうだ。
1971年にスコットランドで結成され、74年にニューヨークへ渡り、アリフ・マーディンがプロデュースしたセカンドアルバムから“Pick Up The Pieces”が全米1位の大ヒットになった。
そして続くサード・アルバムからのヒットがこの“Cut The Cake”だ。



細かくリズムを刻むJBっぽいド・ファンク。

Cut the cake
Give me a little piece
Let me lick up the cream
Cut the cake
Well, just a little piece
Baby you know what I mean

ケーキを食わせろ、ひと欠片よこせ、と連呼するケーキとは、当然単なる菓子ではなく、豊かな実りの比喩だろう。
エロい比喩とも受け取れるけれど、「実りを独占するな」という訴えは、貧困層からの強いメッセージとも受け取ることができる。

どっしりしたファンクの“School Boy Crush”や、疾走感のある“Groovin' The Night Away”などなどファンキーな演奏が盛りだくさんだけど、ファンク・ナンバーだけではなく、メロウでソウルフルなスロウ・ナンバーもかっこいい。リオン・ウェアの“If I Ever Lose This Heaven”なんて同時期のフィラデルフィア系のソウルやハイ・サウンドにも勝るとも劣らないほどのセクシーさだ。



この数年後にリリースされるストーンズの『Tatoo You』のB面のソウルフルさなんかは、こういうものが念頭にあったのだろうと思わされる。

ソウルフルな白人バンドと言えば、ホール&オーツもこの時代にデビューしているし、“Play That Funky Music”のワイルドチェリーや、しばらく後にディスコ・ブームで大ブレイクするKC&ザ・サンシャイン・バンドなんかもかなり黒い。
こういうのを聴いていると、肌の色だけで音楽を分けるべきではないと思う。そもそもR&Bからソウル・ミュージックが生まれる過程ではメンフィスのスティーヴ・クロッパーやダック・ダン、マッスルショールズのダン・ペンやスプーナー・オールダムのように大きな功績を残した白人プレイヤーもたくさんいたのだし。
便宜上は分けることはあるにせよ、その情報に囲い込まれるのではなく、ちゃんと音を聴いて受け止めたいと思ったりするわけです。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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