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Afrodisiac/Fela Kuti & Africa70

ナイジェリアの音楽についてはあまり詳しくはないけれど、古来から音楽が盛んな土地で、ヨーロッパ人が渡来してくる前からそれぞれの民族がいろいろなスタイルの音楽を演奏していたそうだ。
黒人音楽の最大の特徴であるコール・アンド・レスポンスや強いビートはいずれもナイジェリアを含む西アフリカの民族音楽がルーツであり、すべてのブラック・ミュージックの源流であると言っても過言ではないだろう。



そんなナイジェリアのカリスマ・アーティスト、フェラ・クティ。
裕福な一族で育ったフェラは幼い頃から教養として音楽を身につけ、50年代にロンドンに音楽留学。ここで初めて黒人差別を受けた事が彼の生涯に渡り大きな影響を及ぼすことになるそうだ。60年代にナイジェリアに帰国、ハイライフと言われるジャズ系の音楽を演っていたが、69年にアメリカをツアーした際にジェームス・ブラウンに会って衝撃を受けファンクを取り入れ、アフロビートと称するスタイルを作りあげていった。
またマルコムXのブラック・パンサー党など当時の黒人開放運動に刺激を受け、腐敗したナイジェリアの軍事政権を批判するメッセージを打ち出すようになっていった。



延々と反復されるリフと強烈なファンク・ビート。幾重にも重なった分厚いリズムによるグルーヴ。
その上で縦横無尽に咆哮するヴォーカルとサックス。
マイルス・デイヴィスとジェームス・ブラウンを高いレヴェルで融合させた上にジミ・ヘンドリックスを招いたようなエネルギーに溢れた音楽。
一糸乱れぬ統率力でグルーヴしていくリズムセッションとホーンセクションに、女性コーラス隊がからむ様は、1曲1曲は長尺だけどひとつのドラマでも観るように完成度が高い。
アフリカというとなんとなく野性的であったりジャングルっぽかったりという連想をしがちだけどそれはまったくの偏見で、アフリカ的な大らかなノリや野性味や泥臭さはありつつも、それらを粗雑なままではなく有機的に統合させた音楽はむしろとても洗練されている。
それは同時代に活躍したカメルーンのマヌ・ディバンゴや、少し後のジンバブウェのトーマス・マプフーモ、セネガルのユッスー・ンドゥールやマリのサリフ・ケイタらについても同じだ。



フェラ・クティの熱い音楽を聴くと、音楽はメッセージになり得ることを実感する。
何を歌っているのかはよくわからない。
けれど、音そのものに怒りやアジテーションが充満しているのがグイグイと伝わってくる。

フェラ・クティは、このアルバムの頃から政治的メッセージを強め、ナイジェリアで大きな支持を集めていった。
政府はクティの行動を反政府的として、大麻所持などいろいろな容疑をでっちあげては、逮捕、拘置、釈放が幾度も繰り返されることになる。
集団になって威嚇するということはそもそもサルの時代からホモ・サピエンスに組み込まれている仕組みなんだそうで、外敵に対して若い猿が集まって威嚇したりすることがあるそうだけど、為政者からすれば、こういう音楽に合わせて集団で熱狂するということは、恐怖を感じる光景だったのだろう。

音楽を武器に国家に立ち向かい「黒い大統領」と呼ばれたフェラ・クティ。
同じように大統領と呼ばれたジェームス・ブラウンの影響を受けた彼らの音楽的姿勢は、後に黒人国家創設を主張するほどアフロ・アメリカン文化を追求したジョージ・クリントンらのファンクや、パブリック・エナミーらのヒップホップにも強い影響を与えたはずだ。





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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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