FC2ブログ

Entries

◇なんでもおもしろがってみよう / 佐藤雅彦 『毎月新聞』

土曜日の昼下がり、ぼおっとしていたら、ベランダの外に廃品回収業者が音楽を鳴らしてやってきた。
まぁ、それはそれでよくある光景。昔僕もちょっとだけ似たようなバイトをしたことがあるのだけれど、あれはなかなか辛いもんだ。魚釣りにも似て、どこでどうどんなのがエサに食いついてくれるのかわからない。なるべく釣れそうなところを流すのだけれど、そう簡単にはひっかっからないし、運よく声を掛けてもらえたとしてもたいがいは金になるどころか処分費用が必要なものばかりだったりするものだ。あんまりうまい商売ではない。
そんなことを思い出しながら、つい苦笑してしまったのが、廃品回収業者が鳴らしている音楽。

♪エコ~なんでもリサイクル~ エコ~地球に優しいエ~コ~

いや、無駄にガソリン使ってCo2撒き散らかして♪エコ~、はないだろう(笑)。
わざわざエコなんて大上段に構えなくったって、♪毎度おなじみ~廃品回収でございます~でいいんじゃないの?
回収した廃品の大半はリサイクルも出来ずに埋立地行きなのに、何の臆面もなく「地球に優しい」なんて言い切ってしまうセンスは、正直信用できない。

そういや昨日も、いつもの駅前で、某党の地元の政治家が朝から演説していた。
演説している内容自体はごもっともな中身だ。
だけど、その演説の傍らに停めてある車は、明らかに駐停車違反。しかも、エンジンかかりっぱなし。
いくら偉そうなもっともらしい演説されたところで、そのことが×だと思えないようなズレたセンスの人間に投票しようとは思わないなぁ。

まぁ、世の中にはそんなことは結構多い。
いちいち目くじら立てて怒っていても仕方がない。
そんなときは、そのおかしな光景を笑ってやるに限る。



毎月新聞 (中公文庫)
毎月新聞

佐藤 雅彦

佐藤雅彦さん。この人の世の中を見る視点はいつもとてもおもしろい。
おもしろいという言葉には、英語ではFunとInterestがあるけれど、佐藤雅彦さんのおもしろさはInterestの方だ。
この本は、新聞連載中からいつも笑いながら読んでいたし、いつ読み返してもクスクスと笑ったりハッとさせられたりすることでいっぱいだ。

たとえばこんな具合。

●かなりいっぱいになっているゴミ袋をゴミ箱からはずし、新しいゴミ袋をセットしようとゴミ袋の入っている袋を取りだす。袋から一枚取り出しいつものようにゴミ袋にセットするが、ゴミ袋が最後の一枚だったため、手元にはゴミ袋を入れていた透明の袋だけが残った。その袋はもう使いようがなくなったのでゴミ箱に捨てた。
その瞬間、その奇妙な構造に僕はいつもクラクラしてしまう。

●出かけるときなんかに靴を履き終わった後で財布や定期券などの忘れ物に気付いて部屋に戻ることがある。そんなとき、なぜか靴をぬいで部屋に上がるということをせずに、両膝を使って歩いたり、つま先でそろりそろりと上がってしまう。靴をぬぐ程度のことはさして面倒ではないのについそんなことをしてしまうのは、果たしてどういう心理によるものだろう。

●駅で電車を待つ。急いでいる時などはイライラする。駅に「次の電車は○○駅を出ました」という表示があればそのイライラは解消される。ということは、今自分が乗った電車が動き出した瞬間、次の駅でたくさんの人のイライラが解消されたんだ!


日常どこにでもある、気がつかなければそのまま普通にやりすごしてしまうことの中に潜んだ、なんともいえないおかしさやおもしろさ。全然違う角度からそんなものを見つけてきては「これってなんだかおもしろい!」と思えるセンス。
人間のすることはそもそも滑稽で、でもその滑稽さを笑う姿にはどこかゆとりがあって、滑稽さも含めての人の営みへの愛情みたいなものを感じたりもする。

世の中には、「なんだそりゃ?」「なんでそんなことになってんの??」みたいなことはたくさんある。
いちいち怒っていたらキリがないし、だからといって見て見ぬふりをして「世の中こんなもんだからさ。」なんて斜に構えてしまうのもつまらない。
なんでもおもしろがってやろうと思う。
この本は、そんな心の余裕を運んできてくれるのだ。


スポンサーサイト



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
http://goldenblue67.blog106.fc2.com/tb.php/191-ddc52550

トラックバック

コメント

コメントの投稿

コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

Appendix

Profile

golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

Calendar

06 | 2020/07 | 08
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

Gallery

Monthly Archives