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人体600万年史

先日、帰宅してテレビを観ていたら、やり投げの女子競技で日本新記録が更新されたというニュースをやっていた。
しっかりした体格のおねえさんが槍を担いでスタスタタッって走ってうりゃぁぁぁぁー、って投げると槍はグングンと放物線を描いて飛んでいく。
おー、すげーって思わずつぶやいてしまった。
何かとてもピュアなものを見た気がしたのだ。



人類は、野生動物と比較すると身体能力は劣るというのが一般的な通説だ。
人類がいくら100m走で世界記録を出してもチーターやダチョウには絶対に敵わないし、水泳で世界記録を出したところで一番泳ぎが下手なイルカに勝てることはないだろう。
ところが、実は「物を投げる」という能力に於いては、ホモ・サピエンスは生物界で最強なのだそう。
ま、確かに、ライオンも象もカバも物は投げない。
そもそも両腕が空いて物を投げるのはせいぜいゴリラやチンパンジーくらいなんだろうけど、全生物オリンピックがあったとしたら、やり投げやハンマー投げは絶対にホモ・サピエンスが金メダルなのだ。

元々、猿だった頃に木にぶら下がって生活していたから握力や肩の筋力はあったんだろうし、それが有利に働いたことは間違いないんだろうけど、腕力があったからやりを遠くまで飛ばせるようになったのか、やりを遠くまで飛ばすためにより肩の筋力が発達した個体が優位に子孫を残していったのか、どっちなんだろう?
おそらくは双方の相乗効果なんだろうけど。



ちょうどたまたま、人類がチンパンジーの系統から分岐した600万年前に遡って人類がどう進化してきたか、ということを考察した本を図書館で借りて読んでいた。




ダニエル・E・リーバーマン著『人体600万年史』

この本によると、環境の変化から主食としていた果実が手に入りにくくなり、やむを得ず森を出て地上で食べ物を探さなくならなくなってしまった一部のサルたちが、地上で長距離移動をすることに適応して二足歩行を始めたのがそもそもの人類の進化の始まりなんだそうだ。
二足歩行することで空いた両手で、地下茎を掘り起こして食べるようになる。
体毛が薄くなったのは、大型の野生動物が活動しない昼間に食料調達をするために、暑い炎天下で活動することへの適応なんだそうだ。
やがて空いた両手で道具を作ることができるようになる。
芋類を石ですり潰したりして消化しやすくすることで、食べ物の消化にかかるエネルギーを減らせるようになった初期人類は、そのカロリーを脳に回すことができるようになり、脳が大きくなっていった。
発達した脳のおかげで、より便利な道具を作ったり火を扱えるようになる。
火を使って調理することでより消化のコストが下がり腸が短くなる、余剰のエネルギーで脳がより大きくなる、するとよりよい道具が生み出せる、、、そういう循環で人類はどんどん進化していった、ということらしい。
結果論から見て「進化」というポジティブな言葉を充ててはいるけれど、実際に起こったことは「環境適応による変化」、よりよく変化したというよりは、より適した変化をしたものが残ったということなんだろうな。
「こう進化したい」という意志が最初にあったわけではない。「風が吹けば桶屋が儲かる」的な積み重ねの果てに、一番適応した形態がスタンダードになっていくということ。
最初の疑問に戻れば、やりを遠くまで飛ばそうとして肩の筋力が進化したのではなく、肩の筋力が発達した個体が優位に子孫を残していった、ということなんだろう。

ただ、時々の状況から進化が進んだ結果、現代人にとっては逆に、現在の文化や環境がミスマッチを起こしているものがたくさんあるそうだ。
このミスマッチは、現代の様々な病気の原因となっているらしい。
糖尿病は、かつて食料が自由に手に入らなかった時代に貴重だった糖分をとにかく蓄えておきたいというふうに進化した結果、ため込みすぎて発生するもの。
僕が苦しめられている虫歯も、糖分を想定以上に摂るようになって防御機構が追いつかないことが原因だし、近視も近代の人間の目の使い方が当初の人体の設計とズレていることによるもの。そもそも敵や獲物を見つけるために遠くを見るように設計されていたのだろう。
二足歩行による弊害としての腰痛や難産、脳が大きくなったことによる肩凝り、長寿になった結果として遺伝子のミスコピーが増えるのが癌。
現代人の病気のほとんどは、人類の基本設計と現代人の暮らしかたがズレていることによるもので、進化の理論を当てはめれば、やがて糖尿病になりにくい新人類や虫歯になりにくい新人類というものが現れて、そちらの種が生き残りやすくなった結果、現生人類は淘汰されていきそうなものだけど、どうやらその程度では生死に関わりにくいので大きな進化にはならないようだ。
劇的な進化が起こるのは、もっと絶滅寸前のような状況なんだそうで。
例えば、核戦争が起きて世界中が放射能で汚染されたりしたら。
現生人類はほとんど死滅するけど、そういうときに放射能汚染下で生き延びる能力を持った新たな種が誕生して、現生人類とは別の形で人類は続いていくのかも知れない。
そういや「宇宙戦艦ヤマト」のガミラス星人は、放射能の環境下でしか生きられないので、地球を放射能で汚染させて侵略しようとしたんだっけ。
ガミラス星ではそこへ至るまでに何が起きたんだろう。
元々放射能の環境下で進化した生物だったのか、それとも人類と同じような文明を築いた果てに星が放射能に覆われたのか。

まぁ、それはともかく。
何の話だったっけ。
やり投げだ。
槍をただ遠くへ飛ばす。
そのプリミティヴさがいいのだ。
チームプレイや相手との駆け引きもスポーツの醍醐味だけど、豪速球での奪三振やフルスイングのホームランにワクワクしてしまうのはやはりそのプリミティヴさ故なんだろう。
人間より物を遠くに投げることができる生き物はいない。
距離だけではなく、スピードや正確さについてもそうだ。
今夜オールスター戦で投げる佐々木朗希なんかはおそらく野球界のみならず、生物界でも指折りの“投げ手”ということになるんだろうな。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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