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Volunteered Slavely/Rorand Kirk



なんでも演っちゃう人といえば、ローランド・カークだ。
ジャズについて、すっかり正統派のジャズからはぐれてしまった僕にとっては、ジャズ・ファンからは異端視されるようなジャズのほうが心地良いようで、ローランド・カークさんなんかはまさその典型例。
このレコード、一聴するだけで、これは正統派のジャズではないと誰もが思うだろう。
アルバムは、タンバリンとウッドベースのリズムに会わせて野太いコーラスで始まる。
テーマを繰返し循環させていく演奏は、徐々に力強くなっていく。独特のグルーヴが生まれてくる。なぜか途中で“Hey!Jude”のフレーズがはさみこまれ、飛沫を飛ばしまくってわめき叫んでエンディング・・・うーん、わけがわからないですね。
でも不思議なエネルギーに満ちていてとにかく楽しい音楽なのです。



この楽しさは、例えるならば大衆演劇や大道芸人やある種の見世物小屋のような楽しさだと思う。
品がなくてスラップスティック。いろんなモノがごちゃまぜ的に混沌としていて、でも快楽原則には忠実。そういう音楽だ。
そして多くの大衆芸能がそうであるように、そこには古くから親しまれてきた文化が練り込まれている。
例えば2曲め“Spirit Up Avobe”はゴスペルのコーラス隊がリードしていく曲。ピアノのフレーズや重いサックスの音色ももろにゴスペル調だし、曲の途中からジャズ的な疾走感が加わっていく中にもコーラス隊のハンドクラッピングやサックスとコーラスのコール&レスポンスなど黒人教会ルーツの要素が盛りだくさんだ。



ロックっぽいリズムにボサノヴァ的要素を加えた演奏のスティーヴィー・ワンダーの“My Cherie Amour”やアレサ・フランクリンでおなじみのバート・バカラック曲、“I Say A Little Prayer”などR&B/ソウルのヒット曲も演っているのだけれど、単にヒット曲をジャズ風に演ってみたというのとはまるで違っていて、そこにはゴスペル・ルーツの黒さもジャズ的飛翔感もごちゃまぜに織り込まれていて、それがとても心地よい。
単にR&B曲を演っているから黒い、ということではない。
アルバムの後半はコルトレーンのカヴァーなどを含む当時ジャズを席巻したフリージャズっぽい演奏を繰り広げているけれど、ここで顔を覗かせるフレーズにもゴスペルっぽいフィーリングが感じられるし、そこにはおそらく黒人なら理解できる黒人霊歌由来のフレーズなんかも仕込まれているような気がする。



ポップ・ミュージックの、パッと聴いてすぐに楽しめる感じの楽しさとは少し違うこの楽しさは、魂の開放感へと飛翔していく。
○○っぽく演ろう、とかではなく、魂の赴くままにココロを解放させて、好きなことを好きなようにやっている、演奏している本人達がとても満足しながら演奏している、そのことがとてもよく伝わってきて、なんだか楽しくなってしまうのだ。
形式的な上っ面だけじゃなく、ため息も鼻息もよだれもうめき声も喘ぎ声もぜんぶぶっこみでさらけ出しまくる。生きてるって不細工やけどしゃーないわなぁ、とさらけ出すそのさらけ出し方が、芸の域にまで達している。
だから、聴いているこちらの魂もどんどんさらけ出されて解放されてゆくのだろうと思う。

本来ジャズというのはそういうパワーを持った音楽だったはず、という意味では異端とされてきたローランド・カークの音楽こそが逆に一番ジャズの本質を貫いているというパラドックスがここにある。
いや、ジャズに限らず音楽が持つパワーというのはそういうものであったはずとも思わされてしまうのだ。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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