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カラスは飼えるか

日曜日、朝から若いカラスがギャァギャアと鳴き散らかしていて目が覚めた。
独り立ちした若いカラスたちの縄張り争いか、それとも繁殖期か。

たまたまなんだけど僕が住んでいる町には王族の先祖の墓があることから宮内庁保護管轄になっている大きな森があり、また仕事場近くにも太閤さん縁りの広い森林公園があって、そこをねぐらにしているカラスを目にする機会が多い。
カラスって、ゴミを散らかすとか鳴き声がうるさいとか不気味だとかで嫌われがちなんだけど、僕は大好きなのです。
カラスこそは、一番近くにいる野生動物。
スズメやハトやツバメだといくら野生といっても近くに暮らしていてもなかなか共存している感じがないんだけど、カラスとはコミュニケーションが可能だ。
こちらが見つめればあちらも見つめる。こちらの動きにちゃんと対応してくる。
哺乳類でいうとノラネコみたいな存在感がある。
ああいう大きな生き物がふつうに近所で暮らしているっていうのが何かいい感じなのだ。


カラスは飼えるか/松原 始

カラス界のスポークスマンといえば、松原始さんだ。
カラスの研究で京大大学院で博士号をとったという、カラスの専門家。
本のタイトル「カラスは飼えるか」は、ネット上で連載しているときに一番アクセスが高かったチャプターのタイトルなんだそうで、松原さん自身がカラスを飼うことを推奨しているわけではない。

この「カラスは飼えるか」の章の出だしはこんなふうだ。

カラスは飼えるか。
基本、飼えない。
以上。


そもそも日本の法律では、野鳥は飼ってはいけない。愛玩目的の捕獲許可はされていないのだそうだ。

ネット連載時のタイトルは「カラスの悪だくみ」なんだそうだが、それについても松原さんは、カラスは悪だくみなどしないと言い切る。
カラスを追い払ったら嫌がらせに糞をされた、というような話があるけれど、カラスが人間に仕返しをするためには人間が糞を嫌がるということを理解していなければいけない。カラス自身は糞をなんとも思わないし、いくらカラスの知能が高くても人間の文化にまでは理解は及ばない。ひょっとしたら人間の反応から学習する個体もいるのかもしれないが、あくまでたまたまなのだ。
ゴミを散らかす行動にしても、そこに食べ物があるから漁る。食べ物ではないものは除ける。人間から見れば散らかしているように見えても、そもそも片付けるという文化は人間以外にはないのだ。
カラスがいくら頭がいいと言ってもそこまでずる賢いわけではなく、単に自らの行動原理に法って行動しているだけということだ。
それを人間が自分たちの論理だけでとやかく言う。

松原さんは、25年以上もカラスを研究してきたが故のカラス愛と、カラスを過剰に持ち上げない客観的な視点が素敵だ。

人間は小鳥の住みにくい街を作り、一方ではカラスの餌環境を整えているくせに、ゴミを撒き散らして数少ない小鳥を襲うカラスはけしからんと言う。ところが都市部に猛禽が現れると都市に自然が戻ってきたと喜ぶ。実際は猛禽のほうが小鳥を数多く襲っていてもそれは咎めない。

といった言葉からは、人間がいかにイメージだけで行動しているかについての苛立ちが感じられる。
イメージだけではない真実を把握するために研究や学問があるのだという著者自身の矜持を感じるのだ。

ちなみに、カラスが人の住む町中で普通に見られるのは、実は世界中で日本だけだなんだそうです。
そういう貴重な環境、カラスのやることに目くじら立てず、生あたたかく見守りながら、貴重な都会の野生を楽しむのが良いかと。






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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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