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Gone Again/Patti Smith

golden(以下g):「さて、時代は90年代へと。」

blue(以下b):「89年に大学卒業して就職。2年半で会社辞めて、3年近くの無職暮らしと海外放浪。94年再就職、95年結婚、96年には仕事場で責任者になって。個人的にはそういう90年代やったな。」

g:「履歴書かよっ!」

b:「わりと山あり谷ありな20代やったな、と。」

g:「金があるときは暇がなく、暇があるときは金がなかった(笑)。」

b:「90年代は、どんどん新しい音楽に惹かれんようになっていった時期でもあるな。」

g:「聴いてなかったわけでもないでしょ。いいなと思ったバンドは指折っただけでも1ダース以上はあった。」

b:「例えば?」

g:「リプレイスメンツとR.E.M。」

b:「ちょっと80年代の残り香が漂うな(笑)。」

g:「ソニック・ユース、ダイナソーJr.、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、レニー・クラヴィッツ、プライマル・スクリーム、マシュー・スイート、ウィーザー、グリーン・デイ、ウィルコ・・・あと誰がいたっけ。」

b:「いろいろ聴くのは聴いたけどな。」

g:「マイブラッディバレンタイン、オフスプリングにヴェルヴェット・クラッシュ・・・。」

b:「ニルヴァーナもオアシスも一応聴いたで。」

g:「でも残念ながら夢中になったものってほとんどなくて。」

b:「そもそもストーン・ローゼズあたりから躓きはじめたかなぁ。」

g:「ほとんどのバンドは、60年代や80年代の焼き直しか、あれとこれを足して割ったらこうなったとか、なんか既視感があったんだよね。」

b:「その頃から、古い名盤の再発が相次いで、資金はそっちへ流れていったしな。」

g:「実生活の目の前で起きていることがスリリングだったこともあるし、自分もある程度大人になって、うじうじした後ろ向きの青春っぽいのに共感できにくくなった、っていうのも大きいけどね。」

b:「この時代のいわゆるグランジとかオルタナティブとか呼ばれた音は、確かにダークでヘヴィーな世界観のが多かった。」

g:「アメリカの白人社会の行き詰まりが反映されてると言われてます。」

b:「ドイツが統一されソビエトが崩壊して冷戦が終わり、一瞬希望が見えたのも束の間でいろいろと混沌としてて、欧米社会全体に将来展望の見えなさがあったんだろうね。」

g:「パティ・スミスは、そういうオルタナティブなバンドたちに大きな影響を与えていた一人だよね。」



b:「90年代から唯一選んだ『Gone Again』は96年のリリースやな。」

g:「確か8年ぶりの復帰作でした。」

b:「その前の『Dream Of Life』は初めてリアルタイムでリリースされた作品で、“People Have The Power”とか大好きやったわ。」

g:「元々パンクとして世に出たパティ・スミスなのに、ずいぶんと柔らかくなった印象があったよね。」

b:「75年のデビュー作『Horses』とか次の『Radio Ethiipia』とか切れ味鋭い刃物みたいにヒリヒリしてた。」

g:「90年代オルタナティブの連中は明らかに影響受けてるよね。」

b:「で、この『Gone Again』な。」

g:「夫のフレッド・スミスが94年に亡くなって。」

b:「その前にも、パティ・スミス・グループのメンバーだったリチャード・ソールや、若き日の盟友ロバート・メイプルソープを亡くしている。」

g:「ファーストのジャケットを撮った写真家さんね。歌詞カードにポートレートが載ってたっけ。」

b:「そういう方々へのレクイエム的な、かなり重い作品やな。」



g:「シリアスでへヴィー。」

b:「せやけど、おどろおどろしくはないんや。」

g:「死への恐れを感じさせないよね。それどころか、どこか不思議な明るさや清々しさすらあるように思える。」

b:「明るさといってもキラキラした明るさではなく、何て言うかな、、ほの暗い道を照らす一条の灯りのような明るさみたいな感じやな。」

g:「清々しさといってもさわやかな晴れ間ではなく、ひととおり泣き終えたあとの清々しさ、みたいなものだよね。」

b:「父親が死んだあとな、初めてその感じがわかった気がするわ。」

g:「身内の死って、そういう感じするよね。」

b:「“My Madrigal”や“Wing”みたいなレクイエムというかお念仏みたいな曲もあるけど、“Beneath The Soutern Cross”とかラストの“Farewell Rell”とか、どこか明るい光が射してる気がするねんな。」



g:「泣けてくる名曲。」

b:「亡き夫に捧げた歌。」

g:「cause darling you died/and well I cried/but I'll get by/salute our love/
and send you a smile/and move on
わたしは泣いた。でも受け入れるの。わたしたちの愛に敬礼。あなたに微笑みを送って、わたしは行くわ。・・・って。」

b:「身近な人の死っていうのは、なんていうかな、その人の存在そのものが自分の中に取り込まれていくような感覚になるな。」

g:「パティはこのあと、すごく精力的に活動を再開して。」

b:「パンクの女王が、ロック界のマザー・テレサになっていく。」

g:「『Peace and Noise』、『Gung Ho』、『Trampin'』とすごい作品が続いていくよね。」

b:「このアルバムはめっちゃ重たいけど、一方で“Summer Cannibals”みたいなめっちゃかっこええロックンロールも入ってんねんな。」



g:「夫フレッド・スミスとの共作曲として収録したんだろうけど。」

b:「“真夏の人食い祭り、ほら、食え、食えよ”なんてスゲエえげつない歌。」

g:「フレッドが亡くならなければ、こういう痛快なロックばっかりのアルバムがリリースされてたのかも知れないね。」



b:「90年代のポップ・ミュージック・シーンっていうのは、グランジやオルタナ、ヒップホップやミクスチャーロックの一方で、パティ・スミスみたいにベテランアーティストが、若い頃とは違うやり方でかつ成熟した作品をリリースしていた時代でもあったんやな。」

g:「トム・ペティ、エルヴィス・コステロ、ポール・ウェラー、トム・ウェイツ・・・それぞれ素晴らしい作品をリリースしてました。」

b:「ルー・リードやイギー・ポップ、ヴァン・モリソンやロビー・ロバートソン、もちろんミックとキースもね。」

g:「新しいバンドの既視感のある刺激よりも、ベテランたちがどう年を食っていくのかのほうが、自分にとっては切実さがあったんだろうね。」

b:「やんちゃな20代を過ごして、これからどうやって人並みに追いつこうか、というときに励みになったのは、そういうベテランたちの音楽やったというわけや。あとは古いブルースやソウルね。」

g:「若造のうじうじした呟きに共感してたら前へすすめないって無意識に感じてたんだろうね。」






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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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