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Nick Of Time/Bonnie Raitt




golden(以下g):「ボニー・レイットのことは、実はこのアルバムが出るまでまったく知らなくって。」

blue(以下b):「地味なブルースお姉さん的な印象しかなかったかもな。」

g:「特に高校時代〜大学入った頃くらいまでって、実はほとんど女性アーティストのレコードって聴いてなかったんだよね。自然に聴こえてきてたユーミンやあの当時ならレベッカか、そういうのを除いて意識的に聴いたのってジャニスくらい。」

b:「野郎の音楽ばっかり聴いてた。」

g:「男臭いやつね。」

b:「まるで聴かんかったわけでもないやろ。プリテンダーズは大好きやったし、ジョーン・ジェットとか。」

g:「・・・ある意味、男臭い側に入る気がするが。。。」

b:「・・・そやな。。。」

g:「あれ、なぜだったんだろう。女性アーティスト聴かなかったの。」

b:「ま、共感要素が少なかったんやろな。」

g:「あぁ、そうか。」

b:「まだ確固たる自己を確立してへん年頃っていうのは、とりあえず自分がどう在りたいかに興味が行くもんやしな。」

g:「ある意味、自分探し、的な?」

b:「恥ずいな。。。」

g:「ま、とにかく、ボニー・レイットを聴く機会はこのアルバムまでなかった。」

b:「1989年リリース、3年ぶりの復活作やったらしいな。」

g:「そもそもセールスが悪くて、売れ線狙いのポップなのを演らされた挙げ句レコード会社から契約を切られたらしい。」

b:「まぁ、地味やからな。」

g:「他の女性アーティストが、例えば同世代のリンダ・ロンシュタットなんかは若い女の子っぽいキュートさやコケティッシュさでずいぶんファンを獲得していただろうけど、ボニーはそういう点ではね。」

b:「今の時代でルッキズム的な観点での発言はご法度やけど、実際あの時代の女性アーティストの扱われ方というのはルックス重視だったし、アーティスト側でもそれを売りとしていた部分はあったわな。」

g:「ブロンディーのデボラ・ハリーみたいなセクシー路線か、スティーヴィー・ニックスみたいな小悪魔系。」

b:「そういう女っぽさを売りにしないとなると、クリッシー・ハインドやジョーン・ジェット、古くはスージー・クワトロみたいな男勝りの姉御系へ行っちゃう。」

g:「うーん、ボニー・レイットの場合、どこにもあてはまらなさそう。」

b:「そういう意味では、音楽とは別の場所で苦労しはったんやろな。」

g:「そう、でもその苦労が実を結んだのがこの作品で。」



b:「酸いも甘いも知った大人の渋さっていうか、男や女の性別を超えた色気があるな。」

g:「さらっとしつつ芯が太くて時々豪快。シルクのドレスじゃなくて、ごわっとしたデニムのような肌触りというか。」

b:「渋さだけじゃなくて、女性アーティスト独特の甘やかさもあるねんな。苦味や酸味があるからこそ甘味が引き立つ、という感じ。」

g:「元々歌は上手い人だけど、歌い上げ系でもシャウト系でもなく自然体っぽい。」

b:「で、ギターがかっこええ。」

g:「ロウエル・ジョージ亡き後のリトル・フィートに加入をスカウトされたとか。」

b:「ギュワ~ン、バリバリバリ、って感じで、弾いてる姿もかっこええねん。」



g:「ちゃらちゃらした若いお姉さんなんかより、佇まいそのものからかっこよさがにじみ出てるよね。歳を重ねるほどに魅力的になっていく、みたいな。」

b:「売れようが売れまいが私が演りたいのはこんな音楽なのよ、っていう意思を感じるな。」

g:「そう、で、それを肩肘張らずに自然に演ってる感じ。」

g:「一度引退勧告されて、もう売れなくったって好きな音楽ができればいいや、とあきらめたとたんにそれが大ヒットしてしまうのだから不思議なものだね。」

b:「まぁ、世の中そういうもんなんやろな。あざとく狙ったものは所詮見透かされる。私が演りたいのはこんな音楽なのよ、ということを力まずさらりと演ってみせた自然体みたいなのがええ味になった、みたいな。」

g:「売れない時期も含めての紆余曲折が、そういう成熟した魅力を生み出したのかもね。」

b:「だからといって枯れたわけじゃないじゃじゃ馬娘っぽい奔放な輝きや潤いもあるしな。」

g:「そういうのがトータルで、性別を超えた大人の色気になってる、と。」



g:「ボニーさんももう70才を越したんだけど、今も現役バリバリ。」

b:「この『Nick Of Time』以降、ずっと安定して作品をリリースし続けてる。」

g:「去年出たアルバムも、相変わらずとはいえかっこよかったよね。」

b:「若い頃にチヤホヤされた人って、その勘違いを修整できないままイタい晩年を過ごすことも多いけど、ボニーさんは大器晩成っていうか、ほんまええ年のとり方してはるな。」

g:「若い頃の窮屈な思いがあったからこそ、なのかもね。」

b:「まさに、若い頃の苦労は買ってでもしろ、っていうやつやな。」









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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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