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First Of A Million Kisses/Fairground Attraction


golden(以下g):「1988年はこのレコードに救われました。」

blue(以下b):「ほんまそうやな。」

g:「打ち込み多用のBPMの高いディスコ・ミュージック、いわゆるユーロビートと呼ばれた雑な音楽が氾濫していたあの時代。」

b:「どこもかしこもあの音だらけやったからな。」

g:「バイトしてたレンタル屋で、一人この手のが好きなガキがいて、そいつがひたすら店でこの手のを鳴らしまくる。。。」

b:「まじで気ィ狂いそうになったな。」

g:「いや、ほんと辟易した。」

b:「こいつ刺しても正当防衛認められるんちゃうかとすら思うたもん。暴力的な音楽をひたすら強要されました、って(笑)。」

g:「音の暴力だったよね。」

b:「そういう時代の中で聴いたフェアグラウンド・アトラクション。ほんまにほっとした。」

g:「トラディショナルな雰囲気とどこかジャズっぽさも交えたリラックスした演奏。」

b:「ノスタルジックで、ロマンチックで、クールで、聴き終わったあとにはどこか切なくも甘酸っぱい気持ちになれる、どこか幸せな気分になれる。1988年にそんな音楽はほんまに貴重やった。」



g:「マーク・E・ネヴィンのギターがいいねぇ。」
b:「ええ感じに気持ちええ音やな。」
g:「アコースティックだけどやわらかすぎず、なんていうのかな、音の粒がはっきりした音色。」

b:「一音一音がリズミカルやねんな。テロテロ弾きひけらかすんやなく、美しいメロディーを弾き流すんでもなく、リズミカル。」

g:「アコースティック・ベースもいい味出してる。」

b:「あれはベースやなくてギタロンっていうメキシコの楽器らしい。」

g:「あぁ、そうなのか。そういうところがトラディショナル感というか、古き良き時代感を感じるのかもね。」

b:「ドラムもブラッシング中心やし、バンド編成もシンプルで、20年代のジャグ・バンドみたいな雰囲気があるもんな。」

g:「ブルース感や黒人音楽の影響が感じられないところが逆に新鮮に感じたのかもね。」

b:「で、エディ・リーダーの歌な。」

b:「なんていうか、心が洗われるな。」

g:「ほっとする暖かさや、ちょっとしみる切なさを感じるよね。」



g:「自分には似合わないお洒落さなんだけど、あざとさがないのがいいよね。」

b:「こういうのって今お洒落でしょ、的にこれみよがしに提案されるファッション雑誌のお洒落さとは対極にあるような、素朴でさりげなく、でもちゃんとポリシーのあるお洒落さ、みたいな感じやな。」

g:「ちょっとこじらせてる感もあるけど。」

b:「リッキー・リー・ジョーンズっぽいこじれ方っていうか。」

g:「繊細さと大胆さ、脆さと強さの裏表なアンビバレンツ。」

b:「そこがええんやろな。そういう表現っていうのは、ちょっとこじれた人やからこそ出せるんであって。」

g:「なぁーんも考えんとユーロビートで踊ってる奴にはこういう歌は絶対歌えないよね。」

b:「こじらせすぎたらそれこそジャニス・ジョプリンみたいな生命を顧みない方向へ行ってまうけど、全然こじれてないよりはちょっとこじらせてるくらいでないと、心を映す表現者にはなられへんわな。男も女もな。」



g:「フェアグラウンド・アトラクションは残念ながらこの一枚で解散してしまったけれど、この後に出現するアンプラグドのブームの先鞭をつけたのはこのレコードだったんじゃない?」

b:「80年代中頃から続いたシンセ一色の音に、実はみんな辟易してたんちゃうかな。」

g:「そういう意味でこのアルバムの果たした役割は、セックスピストルズ的に革命的だったのかも。」

b:「そこまでではないやろー。80年代前半にはネオアコとかもあったし。」

g:「たった一枚で時代を変えた、っていう点ではそれくらいの偉業だと思うよ。どの曲も捨て曲なしの完璧な一枚だし。」

b:「ま、このあといわゆるユーロビート的なもんは駆逐されて終息していったのは確かや。」

g:「そういう意味では、少なくとも僕自身の世界に平和をもたらした一枚。」











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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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