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If I Should Fall From Grace With God/The Pogues

golden(以下g):「U2やエコー&ザ・バニーメン、ビッグ・カントリーにアラーム、それからウォーターボーイズ・・・80年代中頃にいっぱいいたイギリスのニューウェイヴ系のギター・バンドはかなり聴いたって話は前回少し触れたけど。」

blue(以下b):「アズテック・カメラやペイル・ファウンテンズ、イギリスやないけどオーストラリアのミッドナイト・オイルやアメリカのレッド・ロッカーズとかもな。」

g:「パンク以降、クラッシュやダムド、パティ・スミスやテレヴィジョンなんかに影響を受けた連中だね。」

b:「アラームとかレッド・ロッカーズなんかはスプリングスティーン+クラッシュって感じで一時ほんまよー聴いてたな。」

g:「ビッグ・カントリーも大好きやったね。スコットランドのバグパイプみたいなギターが斬新で。当初はU2より人気あったと思うなー。」

b:「スミスとかR.E.M、リプレイスメンツなんかが出てくるちょっと前な。」

g:「そういう一連のブリティッシュ系のバンドやオルタナ系のバンドとはちょっと毛色は違うけど、いわゆるポスト・パンクのバンドで一番大好きなのはポーグスなんだよね。」



b:「アイリッシュ・トラッド・ミーツ・パンク!」

g:「アラームとかレッド・ロッカーズとか、なんていうか、青筋立てて怒りまくってるじゃない?」

b:「ああいうストレートに怒りまくってるんが好きやったんや、あの当時は。」

g:「それに比べるとポーグスはもっと雑というかテキトーというか。」

b:「怒ってはいるけど、屈折してて、でもその屈折はスミスとかとは逆方向で。」

g:「やけっぱちな感じ。」

b:「アラームやレッド・ロッカーズの切実で熱血なメッセージから、やけっぱちなポーグスへ。高校生から大学生にかけてストレートなものからアバウトなものへと好みが変わっていったんは何やったんやろな。」

g:「やさぐれ感に共感するような、まぁ居酒屋のバイトとかで大人の世界のブルージーなとことか見ていったしな。こういうやさぐれ感のあとでは、90年代に出てきたグランジやオルタナは重いばかりで弾け感がなくて、あんまり惹かれる感じにはならなかったんだよね。」



b:「“Fiesta”が最高にかっこええな。」

g:「もう、ピョンピョン飛び跳ねたくなるくらいのタテノリナンバー。」

b:「ライヴで観たんやけど、オールスタンディングのホールがえらいことになっとったわ。」

g:「血が騒ぐようなかっこよさやからね。」

b:「1曲めのタイトル曲“If I Should Fall From Grace With God”もイキオイあって盛り上がるな。長いタイトルやけど。」

g:「日本盤は“堕ちた天使”ってなってるけど、訳すると“もし私が神の恵みから見放されているのなら”みたいな感じかな。」

b:「タイトルからしてどん底で救いようがない。。。」

g:「ポーグスのよさは、そういうどん底暮らしのやるせなさと、その裏返し的自暴自棄なくらいのぶっ飛ばし感なんだよね。」

b:「怒りとため息、鼻息やうめき声、それから刹那の快楽。そういう喜怒哀楽がそのまま音楽に滲み出てる。爪に火を点すような慎ましい暮らしと、一攫千金への憧れみたいな庶民感っていうか。」

g:「虐げられた底辺の暮らしと、だからこそはっちゃけるしかないパワーっていうのがね。」



b:「ちっこいパブで飲んだくれがみんなで大合唱になりそうな“Bottle Of Smoke”とか“Recruting Sergearnt”なんかもええ感じやな。ポルカみたいなリズムと哀愁のアコーディオンがまたたまらん。」

g:「アコーディオンもそうだけど、バンジョーとかフィドルとかマンドリンがいい味出してるよね。」

b:「およそロックンロールっぽくない楽器やのにめちゃくちゃかっこええのが凄いな。」

g:「あと大好きなのはは“Thousands Are Sailing”。大きな飢饉があって多くのアイルランド人がおんぼろ船で海を渡って国外へ逃げるしかなかった物語が歌われている。」

b:「虐げられてきた民族の怨恨がふつふつと感じられるな。」



g:「アイルランド人が国を捨てて移民にならざるを得なかったのは、主食としていたじゃがいもの病気の大発生が原因だったらしいね。」

b:「アイルランドの豊かな土地はイングランド人に収奪され、アイルランド人に残されたのは痩せて荒れた土地しかなくて、アメリカから持ち込まれたじゃがいもは小麦よりも荒れ地でもよく育つため、あっという間に国中で栽培されるようになっていったらしい。」

g:「そこへ飢饉が襲った。大地主たちはそれでも小麦はアイルランド人に渡さずイングランドへ輸出し続けたんだそうだね。」

b:「1845年〜49年の頃。それで人口の2割が亡くなり、2割が国外へと移民したらしい。」

g:「多くの人々は当時無限の開拓地だったアメリカへ渡った。」

b:「1800年代中期のアメリカは、建国の中心となったアングロサクソンのピューリタンが幅をきかせてて、ケルト系でカソリックのアイルランド人たちは鉱山とか線路敷設とか厳しい労働しか与えられへんかったそうや。」

g:「差別も普通にあった時代だもんね。」

b:「ただ、虐げられたアイルランド人たちが持ち込んだケルト系の民族音楽が、同じように虐げられていた黒人たちのフィールドハラーと結びついてブルースが生まれる元になったわけやから、アメリカへ渡ったアイルランド人はロックンロールの大いなるご先祖様でもあるねんな。」

g:「アイルランド人がバンジョーやフィドルを持ち込まなかったらブルースは生まれなかったのかもね。」

b:「ポーグスは、ロックンロールの古いルーツであるアイルランド民謡を、再びロックンロールと融合させたというわけやな。」

g:「ポーグスの音楽にある原初的なエネルギーっていうのはそういうルーツがあるからなんだろうね。」

b:「民族や文化や、時代までもを越えて生々しく心の深いところまで響き渡るだけの強さっていうかな、1000年前の人間も1000年後の人間もポーグスで踊りまくれるんちゃうかって思うわ。」

g:「原始人と近未来人が一緒にポーグスで踊りまくる図って、想像しただけでワクワクする。」

b:「黒人も白人も東洋人もみんな一緒くたにな。ポーグスの音楽やったら、ロシア人もウクライナ人も一緒に盛り上がるはずやで。こういう生々しいはっちゃけ感は全世界共通やと思うわ。」

g:「みんないっしょ、みんなおんなじ庶民。世界平和っていうのはそういうのをお互いに感じるところから始まるんだろうね。」

b:「世界平和まで引っ張り出してくるとかなり大げさやけど、でもまじでそうやと思うわ。」









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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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