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No Surrender

冬といえば、なぜだろう。
やたら走っていたという印象がある。
白い息をハァハァさせて。

僕の通っていた高校は、小高い丘の上にあった。
丘の下にはため池があって。
200m四方くらいの池をぐるりと囲んで学校の周囲を一周周るとちょうど1kmくらい。
冬の体育の授業ではやたらと、この学校一周コースを3周4周させるランニングがプログラムされていた。
あれ、今思えば教師たちが楽できる仕組みだったんじゃないのかと思うんだけど、、、とにかく生徒が走っているのを見張ってるだけでいいわけだから。

もちろん、まともな高校生で教師に命じられた学校周回走を素直に走る奴なんていない。
だらだら歩いては教師から追い立てられる奴らがいた。池の内側をショートカットしようと崖にへばりついて横ばいしながら、結局池にはまった奴がいた(まともに走ったほうが楽だったんじゃないか)。

ところが、僕はその数少ない「まともじゃない高校生」の側だった。
ちゃんと走ったのだ。
あんまり運動が得意ではなく、とくに体操や球技のセンスがなかった自分にとってはほとんど唯一といっていいくらい、他の奴らと普通に渉り合えるのが中・長距離走だったのだ。
なにしろセンスなんていらない。
根性さえあれば走れる。
今思えば負けず嫌いだったんだな。
それから、周りの奴らが苦手だ嫌だと公言するようなことをさも苦もなくやってのけるのがかっこいいと思いこんでいたフシもあっただろう。
オマエラトハチガウンダゼ的な自分だけの優越感的若気の至り。
ま、そういうひねくれた奴だったのは間違いない。
とにかくペースを守って規則正しく走った。
追い抜いても追い抜かれても、ペースを崩さず。

走るのが好きだったわけではない。
ただ、そもそも走らざるを得ないことはけっこうあった。
原因は寝坊だ。或いは低血圧だ。或いは夜ふかしだ。
朝、起きれない。冬はとくに、あったかい蒲団から出たくなくってギリギリのギリギリまで寝てた。
学校までは約2.5km。歩けばだいたい35分ほどの道のりを走って登校するようなことが、冬はしょっちゅうあったのだ。
8時15分に起きて、朝飯は抜き。トイレ行って歯を磨いてコーヒーを飲んで、8時30分に家を出れば、ときどき歩きながらもなんとか20分あれば学校に着く。
8時50分の始業にギリギリセーフ。

走っている間中、頭の中で鳴り響いていたのは、例えばこの曲だだった。



愚直にエイトビートを叩き続けるドラムと、ダウンストロークを繰り返すベース、かき鳴らされるギター。
そしてボスが歌うのだ。
「俺は退却しない、屈服しはしない」と。



個人的な思い出としての冬の歌だけど、実はこの歌にはちゃんと冬の季節が歌いこまれている。

♪Like a solder in the winter night
with the bow to defend
No Retreat,No Surrender

 真冬の夜に行軍する兵士のように
 守るべき誓いを持って


そういうヒリヒリするような何かを心の底に抱えこみながら、コノヤロー、バカヤロー、負けてたまるかー、って歯を食いしばっていたんだろう。

そういう思いもずいぶんと失くなってきちゃったな。
まぁ、それはきっと悪いことではないはずだと思いたい。
寝坊癖は20代前半の社会人になってからも続いてたんだけど、いつの間にか、起きなきゃいけないときにはすっと起きれるようになってしまったから、遅刻しそうだなんて走ることもそうそうない。
もっとも、そういう事態になったところで30mも走らないうちに息が上がるか足がつるかになってしまうに違いないのだけれど。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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