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Briefcase Full Of The Blues / The Blues Brothers




blue(以下b):「ブルース・ブラザーズはパンクやな。」

golden(以下g):「は?何をいきなり意味のわからんことを。」

b:「ブルース・ブラザーズはパンクなんや。」

g:「コメディアンが歌うリズム&ブルース・バンドのどのへんがパンクなんでしょ?」

b:「もちろん音的にはパンクとはかけ離れてる。そこではなくて、精神的にパンクのスピリットを持ってたな、ってゆーことや。」

g:「うーん、少しわかるように説明をお願いしたい。」

b:「ブルース・ブラザーズのレコードデビューは1978年。76年くらいから“サタデー・ナイト・ライブ”には出てたらしいけど、その当時っていうのは、奴らが演っているようなリズム&ブルースは超絶古臭い音楽としてまるで見向きもされてへんかったそうや。」

g:「ロックはハードロック、プログレ、グラムロックからパンクへ。ブラック・ミュージックの世界でもファンクが台頭したりディスコ・ブームが始まったり、まぁそういう時代だったんでしょうね。」

b:「映画にな、レイ・チャールズとかアレサ・フランクリンとかジェームス・ブラウンとか出てるやん。今の感覚やと“あんなビッグスターがっ”って感じするけど、あの当時は忘れられつつある過去のスターやったみたいやで。」

g:「たのきんトリオが出てきた当時の錦野旦みたいな?」

b:「例えが古すぎるな。」

g:「で、それがパンクとどう結びつく?」

b:「まぁ慌てるなって。そもそもブルース・ブラザーズは、ブルースが大好きやったダン・エイクロイドがジョン・ベルーシを誘って結成したらしいんやけど。」

g:「ジョン・ベルーシは当初は全然興味がなかったのに、エイクロイドの熱意に押されてリズム&ブルースを聴かされるうちに沼にはまったらしいね。」

b:「リズム&ブルースのカヴァーバンドなんか、それこそ当時はひなびた温泉街の余興のネタみたいなもんや。それでも好きなもんをとことん演ってるうちに、こいつらスゲェーってなって人気は沸騰、とうとう映画まで作ってしもうた。」

g:「初めて観たのは高校に入ったあとくらいやったかな、テレビのロードショーで。大爆笑したよ。」

b:「奴らをきっかけに、古臭い音楽やって蔑まれていたリズム&ブルースがリヴァイヴァルするわけよ。アレサもJ.Bもレイ・チャールズも、その勢いでスーパースターにカムバックや。」

g:「なるほど。」

b:「要は、好きな音を信じて周りからコケにされようが思いっきり演ることで時代をひっくり返した。ゴチャゴチャときらびやかになったりディスコ・ミュージックみたいにセールス至上主義になってたブラック・ミュージックを一気に原点に戻させたわけや。」

g:「うーむ。」

b:「これって、パンクでラモーンズやセックス・ピストルズがやらかしたこととおんなじやろ?」

g:「うーむ、こじつけっぽいけど・・・まぁパンクかどうかはともかくとしても、ブルース・ブラザーズがリズム&ブルース見直しの起点になった、ということは理解できました。」

b:「やっていること自体はシンプルかつベーシック。インパクトのあるプレイスタイル。こういうところも共通点や。」

g:「黒人音楽のおいしいところを部外者である白人のコメディアンが再発見した、ってところも通じるものがあるかもね。」



b:「かっこえーなー、このファンキーさ。」

g:「サム&デイヴの“Soul Man”、キング・フロイドの“Groove Me”、ジュニア・ウェルズの“Messin' with the Kid”・・・そうそうたる名曲揃いだもんね。」

b:「ジョン・ベルーシのヴォーカルは決して巧いとはよー言わんけど、大好きなシンガーへのリスペクトをとことんなりきってしまうことで表現する、そこに音楽への深い愛情を感じるねんな。」

g:「ダン・エイクロイドの低音とハープもかっこいいよね。"Hey Bartender"や“I Don't Know”でのソロとか"Shot Gun Blues"でのバッキングとか、"Soul Man"のコーラスとか。」

b:「"Rubber Biscuit"での早口のラップみたいなトーキング・ヴォーカルとかな、芸人魂感じるわ。」



g:「バンドは全盛期のスタックス/メンフィス・サウンドを創ったスティーヴ・クロッパーにドナルド・“ダック”・ダン、それにバリバリのブルース・ギタリスト、マット・マーフィー。」

b:「ドラムは後にチャック・ベリーやキース・リチャードとも共演することになる若き日のスティーヴ・ジョーダンや。」

g:「そもそも芸人くずれが、ホンモノの伝説的バンドと共演したってのもすごいよね。」

b:「クロッパーもダック・ダンも当時は仕事にあぶれとったらしいけどな。」

g:「でも、基本冗談みたいなプロジェクトでしょ。そこにホンモノが入るって。モノマネショーの本人登場みたいな。」

b:「いや、そこもパンクっぽいと思うねん。冗談みたいなことをとことん本気で演る。とことん本気で演るうちに筋が通っていく。これもピストルズが演ってたことに相通じる世界があるように思うわ。」

g:「振り切りまくった本気の冗談。」

b:「冗談もマジで演りきったらホンモンになるってこと、とにかく何をどう言われようと好きなことを貫くべし、ってことやで。」








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コメント

[C3466]

名盤さん、こんばんは。
コロナ禍以降すっかり出不精ですっかりご無沙汰致しております。

とりあえずは楽しいと思ったことだけとことんやりたいですね。

新年もよろしくお願いします。

  • 2022-12-30 20:17
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3465]

>「冗談もマジで演りきったらホンモンになるってこと、とにかく何をどう言われようと好きなことを貫くべし、ってことやで。」

全くその通りだと思います。
その意気で来年は頑張りたいと思います。
というから今からですね。
ブログ引っ越しましたので、またよろしくお願いします。
https://open-g.seesaa.net/

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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