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ソウル・ミュージック ロックのゆりかご(31)

1956年〜1957年にかけては、黒人プレイヤー側でもエルヴィスからの刺激を反映した音楽的変化が起こっていた。
それが、リズム&ブルース〜ソウル・ミュージックへの発展だ。

この時期、後のブラック・ミュージック史でレジェンドとされるアーティストたちが続々とデビューしたり革新的な楽曲をリリースしている。





ゴスペル界のスターだったサム・クックは、ポップ・ミュージックの世界に転身し、“You send me”を始めとする、美しいメロディーやわかりやすいアレンジと黒人らしい歌を融合させた。





レイ・チャールズは売れないジャズっぽいブルースシンガーだったけど、ゴスペル的コール&レスポンスや高揚感を導入して真っ黒いポップスを作りあげた。





ジェームズ・ブラウンは、自らの信念の元に楽団を指揮し、ポップスとは正反対のブラック・エンターテイメントを生み出した。





ジャッキー・ウィルソンも高揚感のあるポップスを、ロックンロールを下敷きとしたフォーマットで作りあげた。
これは後にモータウンのソウルの基礎になっていく。


彼らが果たした役割も、ロカビリーと同じく既成概念の打破だった。
黒人はこのように振る舞わなければいけないという社会のしばりを抜け出して、自由にやりたいように行動できる時代の変化の象徴としてソウルミュージックは生まれたのだ。

1950年代初頭までの黒人アーティストたちは、白人社会におもねって「芸人」や「エンターテイナー」的な道を選ぶか、黒人社会のディープな部分に深くコミットしていくかのどちらかを選ぶしか、アーティストとして生き抜いていく術がなかった。
カウント・ベイシーやルイ・アームストロングやルイ・ジョーダンは前者で、チャック・ベリーですらここを踏み外してはいない。白人たちから目の敵のされないようエンターテイナーに徹して無毒であることをアピールしている。
後者の代表はロバート・ジョンソンやマディ・ウォーターズやハウリンウルフ、そしてマイルス・デイヴィスだろう。白人たちには一聴しただけでは理解できない価値観を持って黒人社会に深く潜り込んでいた。

新しい世代のソウルミュージシャンたちは、そのことを自覚しながら、黒人としてのアイデンティティを守りつつも白人社会に受け入れられる手法を取っていった。
例えばサム・クックの楽曲の、ストリングスをたっぷり仕込んだアレンジは明らかに白人社会で広く受け入れられることを目的としている。
そういう曲に乗せて、サム・クックは“Chain Gang”で奴隷労働の苦しみを歌ったり“Wonderful World”で人種を超えた融和を歌ったりした。
ジェームズ・ブラウンとレイ・チャールズは自分の文化に忠実に、おもねらずに白人社会に受け入れられる音楽を創造したし、ジャッキー・ウィルソンはウキウキ弾むようなビートとキッレキレのダンスとシャウトで白人の若者たちをも魅了した。



ソウルの文脈からは少し外れるけれど、もう一人、ハリー・ベラフォンテもワンアンドオンリーなスタイルと社会変革的な視座を持った新しいミュージシャンだった。



フランス領マルティニーク諸島出身の父親とジャマイカ出身の母親の元に育ったベラフォンテは、カリブ海ルーツのフォークソングのカリプソをアメリカ社会に受け入れられるように加工して歌ったのだ。



カリプソはリズムこそ能天気だけれど、歌われているのはブルースと同じ労働の苦しみだったり権力者をからかうような皮肉だったりで、ポップなヒット曲に乗せてこういう立ち位置からの音楽を拡散させた。



そもそも社会にガスは充満していたにだろう。
エルヴィスのロックンロールが導火線の役割を果たした結果として、黒人社会にも大きな変革が連鎖していった。

ソウルミュージックの創造者たちの音楽は、世の中の変化の動きに加速度をつけていった。












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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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