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ハードバップ ロックのゆりかご(30)

この「ロックのゆりかご」シリーズを聴いている間、古い音楽の古い音源をspotifyでプレイリストを作ったり、それをシャッフルモードにしたりして聴いている。
ランダムに流れてくる音楽に「あら、これ誰だっけ?」ってなったり「おーっ、これかっこいいーっ!」ってなったり。

昨日ハタと手が止まって「めっちゃかっこええやんっ!」って唸ってしまったのはこの曲でした。



曲名は“Asiatic Raes”。
ソニー・ロリンズの演奏だった。

モダン・ジャズやフュージョン、ハードロック/ヘヴィメタル、それからモダン・ブルースの一部にはいわゆる「演奏技術披露のための演奏」があって、もちろん技術の快感という種類の音楽の楽しみ方があるのは否定しないのだけど、感情表現そっちのけでそういうのだけを有難がる人たちはどうも苦手ではあります。
だけど、だからといって良い音楽にまで耳を塞ぐほど偏屈ではない。
「良い音楽」をどう定義するかといえばこれはこれで難しいテーマなのでここでは敢えて踏み込まないけど。

まぁそれはともかく。
ソニー・ロリンズだ。



“Asiatic Raes”という曲は1957年の録音で「Newks Time」というBluenoteのアルバムに収められているらしい。

演奏陣は、
ソニー・ロリンズ(tenor saxophone)
ウィントン・ケリー(piano)
ダグ・ワトキンス(bass)
フィリー・ジョー・ジョーンズ (drums)
というカルテット。

現代的なカテゴライズで言えば、この時期のモダンジャズはハードバップと呼ばれるらしいのだけど、それはこの際どうでもいい。
とにかく、かっこいいーと思って手を止めた、その事実が大事。
で、どこがかっこいいーと感じたのかと考えながらリピートしてみるが、何度リピートしてもやっぱりかっこいいーと途中で思考停止になってしまう。
その言葉にできない感が、ジャズの快感だと思う。

この曲のサキソフォンの、少し孤高な感じがする音色。
その太いけれど繊細なニュアンスを残したままのサキソフォンが疾走する。ブレスの長い、咆哮のようなフレーズ。
それをリズム隊があおる。
ベースが細かい裏のリズムを刻んだかと思えば曲の半ばからはランニングベース的なスタイルでグルーヴを作る。
ピアノがそのバトンを受け取るように疾走感をあおりグルーヴをつなぐ。
ぴしっとしまったタイトな音で鳴るドラムが緩急をつけながらリズム隊をリードしていく。
全員で突撃!かと思えばひとりずつじっくり。場を上手に回しながら少しずつ盛り上げて、怒涛の大団円へ流れこんでいく頃には、すっかり巻き込まれてしまっているのだ。



モダンジャズやハードバップがロックンロールに与えた影響は、表面的には多くはないのだろうけど、まるでないわけでもない。
腕に覚えのある奴らが集まって一触即発のピリピリした現場で音楽を紡いでいく姿は、指揮者主導のビッグバンドやプロデューサー主導のポップスより遥かに生生しさがあり血が通っている。それはある時期までのロックンロールが持っていたものと同じ匂いがするものだ。
また、こういう丁々発止のインプロヴィゼーションのバトルや瞬間でスパークするアドリブの数々は、クリームやジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリンやフリートウッド・マックらのブルースバンドや数多のプログレ・バンド、或いはパーラメント/ファンカデリックのようなファンクバンドへも影響を与えたはずだ。

それに何より、このスリリングでディープな音楽には、ロックンロールと同じように、ブルースのフィーリングが詰まっている。







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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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