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Thunder Road

お昼前、雷がゴロゴロと鳴って、シャワーのような激しい雨がひとしきり降った。
夏ですね。

雷って、どこかワクワクしませんか?
って問うと「ワクワクどころか、ビクビク、ヒヤヒヤするわよっ!」ってお叱りを受けるだろうか。
「そうそう!」って言う人もいるんじゃないかと思うんだけど。

雷のどこが好きっていうと、その破壊力だ。
雷が鳴るだけで、均衡が保たれていた平穏な状況が一瞬でひっくり返る。
雷のあとには激しい雨が訪れる。
人はすべてを一時停止にして、雷が収まるのを待つしかない。
偉そうなこと言ってる奴も、雷の前では立ち往生するしかない。
その有無を言わせぬ圧倒的な存在、その存在そのものにワクワクしてしまうというわけだ。



ブルース・スプリングスティーンがまだ髭面の痩せた若者だった頃に歌った“Thunder Road”は、そんな雷を背景にして、未知の荒れ地へと旅立とうとする歌だ。


Thunder Road / Bruce Springsteen

冒頭、ロイ・ビタンのピアノとブルースのハーモニカでひっそりと淋しげに始まるこの歌は、少しずつリズムがテンポを上げ、やがて荒々しく加速していく。
軋むテレキャスター、あふれんばかりにメロディーに言葉を詰め込んで連射するスプリングスティーン、そしてブレイクの後のクラレンス・クレモンスのサックスの咆哮!
初めて聴いた時には鳥肌が立つほど、その場で一緒に吼え叫びたくなるほど、感動し興奮したのを今も覚えている。

歌そのものは、野心に満ちつつも不遇をかこっている若者が、同じように世間から少しはじかれた女の子にシンパシーを抱きパートナーになろうと口説いている歌。
ただ、そこにある切迫感がハンパない。
今一歩踏み出さなければ、全部ダメになってしまう。今、今なんだよ。
一緒に行こうぜ。乗り越えようぜ。
そんな若者特有の焦燥感や、根拠のない無敵感が、まるで青春映画のワンシーンのように素敵だ。

さぁ、手をとって
今夜俺たち
約束の地に向かって走り出す
雷鳴轟く道を
エンジン響かせてぶっ飛ばす
太陽を殺るためには
今走り出さなきゃ間に合わない
しっかり俺に捕まって
雷鳴轟く道を


この歌の主人公は、雷が鳴り、激しい雨が降り始めたとしても、その雨の向こうの晴れ間があることを信じている。
その晴れ間にたどり着くまでずぶ濡れになる覚悟と共に。
そのストイックな姿勢を、16歳だった僕は率直にかっこいいと思ったのだ。

平穏な状況をぶち壊して不穏な空気をもたらす雷。
ジグザグに空を割る稲妻はまるで、硬い殻を割ったひび割れのよう。
“だらだらと続いていくありきたりな日常、放っておいたらそのままずるずると、何の面白味もない大人たちと同じような大人になってしまう。
大人たちはさもそれが当然のように半ばあきらめて受け入れているけど、あんなふうにはなりたくない。
奴らに取り込まれる前にここを出ていかなくては・・・”
雷はそんな心の葛藤をぶち破るメタファーとして機能している。
そしてその後に嵐が訪れること、主人公の道程は多難であることを暗示する。
でも、そうとわかっていても飛び出さなくっちゃいけない時期っていうのはあるんだと思う。
そうやって雷の鳴り響く嵐を呼ぶ男の夜を通り抜けることができた者だけが、ちゃんとした大人になれるのかも知れない。

だから、雷なんかにはビビらない。
そうやっていくつかの嵐をくぐり抜けてきたし、今も雨雲はあっちこっちで湧いているんだろうけど、ま、なんとかなるのだと腹をくくれるようにもなった。ワクワクするとまでは言わないけど、不安になっても仕方がない。
50代も半ばになると、そういう感覚もだんだん板についてきた気がする。






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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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