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十字路にいたエルヴィス ロックのゆりかご(24)

サン・レコードで5枚のシングルを残したエルヴィスは、翌1955年に大手RCAと契約し、全米デビューすることとなる。

1950年代のアメリカでは、音楽も人種隔離的な扱いを受けている部分が多く残っていた。
当時のロックンロールのヒットソングも黒人の曲をパット・ブーンらの白人がカバーし、そのカバー版が白人向けの商品として宣伝され、チャートに掲載され、またラジオなどで流れる傾向にあった。
たとえ同じ歌を同じような編曲で歌ったとしても、黒人が歌えばリズム・アンド・ブルースに、白人が歌えばカントリー・アンド・ウェスタンに分類されることが常識だった。
プレスリーは、このような状況にあって黒人のように歌うことができる白人歌手として発掘された。
(Wikipediaより)

RCAでのレコーディングで求められたのも、黒人音楽の白人向け市場版であり、リアルタイムでのヒット曲のカバーが量産されることになる。

まずはエルヴィスがデビューするより前のヒット曲のカバーを5曲紹介します。



■ロックンロールの時代になってヒット曲を量産するロイド・プライスの1952年のヒット、“Lawdy,Miss Clowdy”。



■ビリー・ワード&ザ・ドミノス在籍時から人気が高かったクライド・マクファターが、ドリフターズに移籍して最初の1953年のヒット“Money Honey”。



■ビッグ・ママ・ソーントンが同じく1953年に放ったヒット“Hound Dog”。



■ルイ・ジョーダンの後を受けてジャンプ・ブルースのスターになったビッグ・ジョー・ターナーの1954年のヒット“Shake,Rattle and Roll”



■後にソウルの王様として君臨するレイ・チャールズの若き日の1954年のヒット“I Gatta Woman”。



当時スターだったビッグ・ジョー・ターナーやビッグ・ママ・ソーントン、エルヴィスと同時進行でヒット曲を連発していくレイ・チャールズやロイド・プライスやクライド・マクファター。
曲そのものはリズム&ブルースもロックンロールも同じものだということがよくわかる。
しかし、原曲とエルヴィス版を聴き比べていくと、バンド編成に大きな違いがあり、これが両者の印象を大きく隔たたせているのだ。
ピアノによるブギウギ系の跳ねるリズムとサックスのブロウによるソロが花形だったリズム&ブルースに対して、エルヴィスのバンドはギターとベースの3人編成。
そもそも最初の録音である“That 's Alright”は、エルヴィスがたらたらとギターを弾きながら歌い始めたものに、そのときスタジオにいたスコティ・ムーアとビル・ブラックが慌てて即興でバックをつけたものが雛形になっているそうだ。




スコティ・ムーアとビル・ブラックはいずれもカントリー系のミュージシャンだったそうだ。
このギターとベースによるバッキングがやがてロカビリー〜ロックンロールとなっていったのであって、そうするとやはりロックンロールは、黒人由来のリズム&ブルースと、白人由来のカントリーが生みの親という定説どおりとなる。
エルヴィスはリズム&ブルースとカントリーの十字路にいたのだ。

いや、ちょっと待てよ。
ここまで歴史を見てきた中では、カントリーは白人由来とはいい難く、むしろブルースに直接的な影響を受けている。
黒人由来、白人由来というよりは、ブルース系統の音楽とジャズ系統の音楽が、エルヴィスを通じてミックスされたと言ったほうがいいのかもしれない。

一方に、
フィールドハラー、労働歌
→ブルース
→カントリー
というギターと歌を中心にした流れ。

もう一方に
黒人霊歌、賛美歌
→ジャズ
→リズム&ブルース
という、ピアノ・サックスと器楽演奏を中心にした流れ。

ブルースをピアノで演ったブギウギや、ギターでジャズを演ったT-ボーンや、ミンストレルショーやメディスンショーなどの大衆演芸要素や、古くヨーロッパの民謡から直結したようなブルーグラスの要素も織り交ぜつつも、エルヴィスを媒介にこの大きな流れが合流したといえるのではないか。
このふたつの流れは、口承音楽のグリオと、祈りのために捧げられたドラムを中心としたリズムとハーモニー、というふたつのアフリカ・ルーツまで遡ることができるのかも知れない。

時間も地理も遥かに隔たった大きな流れがいくつもいくつも合流した先にたどりついたロックンロールという大河。
根拠のない妄想ですが、こういう音楽を聴いていると、ついついそんな妄想をつい楽しみたくなってしまうのです。







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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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