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エルヴィスが憧れた ロックのゆりかご(21)

「ロックゆりかご」シリーズ、ここまでは、1920年代のブラインド・レモン・ジェファーソンから始まって、デキシーランド・ジャズ、ジャグバンド、クラシック・ブルース、デルタ・ブルース〜シティ・ブルース、フォーク、ヒルビリーミュージック〜カントリー、ジャンプ・ブルース、ビ・バップ、ゴスペル、ドゥワップといろんな角度での重要アーティストをフォーカスしてきました。

1920年代からのジャズとブルースをまとめあげたのが30年代後半のカウント・ベイシー楽団。
30年代後半以降のエレキギターの導入、ジャンプ・ブルース〜リズム&ブルースの流れ、カントリーの隆盛の流れをまとめたのがエルヴィス・プレスリー。

エルヴィスの回で書いたように、エルヴィスの音楽は突然変異的に発生したのではなく、そこに至る脈々とした背景がある。
実際、エルヴィスがデビュー当初にリリースした曲はほとんどがカバー曲なわけで、これらの曲からエルヴィスがどういう音楽に刺激され影響を受けたかを伺い知ることもできる。

今回は、1954年エルヴィスがサン・スタジオで録音した歴史的レコードから、エルヴィスが憧れた楽曲を紹介してみよう。

■エルヴィスが最初にリリースしたシングル“That's Alright”。
これはミシシッピ出身のアーサー・クルーダップの1946年のヒット。





■カップリング曲は、ビル・モンローの“Blue Moon Of Kentucky”。
ビル・モンローは、いわゆるブルーグラスの第一人者。音楽的にはカントリーと同じルーツを持つのだろうけど、バンジョーやマンドリンが多用されるのが特徴。

エルヴィスのカバーは、ブルーグラスの原曲をブルース風に演奏するという、当時としては突飛なものだった。





■2枚目のレコードは、ジャンプ・ブルースのロイ・ブラウンの“Good Rockin' Tonight”。

ロイ・ブラウンは、ルイ・ジョーダン直系ともいえるジャンプ・ブルースを得意としており、エルヴィスのシャウトにはロイ・ブラウンの影響が伺える。





■このカップリングは、パティ・ペイジの1950年のヒット“I Don't Care if the Sun Don't Shine”だった。
原曲のパティ・ペイジのバージョンは、当時白人層に好まれたであろうポップス風で、エルヴィスのカバーには「もしみなさんが大好きなポップスを黒人が歌ったら」的なチャレンジだったのだと思う。






最初の4曲が、ブルース、ブルーグラス、ジャンプブルース、ジャズ・ヴォーカル。
こういう広いジャンルの曲をエルヴィスが拾いあげたということは、それだけエルヴィスが広く音楽に関心があったということだろう。
そしてそれをそのまま演るのではなく、自分流に演奏してみせた。

それではエルヴィスが自分流の参考にしたものは何だったか。
ヒット曲連発の最初の黄金期である1957年に、エルヴィスはあるインタビューでこのような発言をしている。

「有色人種の皆さんは僕が生まれる前からまさに僕のように歌い演奏していたし、彼らからそのようなやり方を学んでいたんです。
今僕がやっているギターを叩くような弾き方はミシシッピのトゥペロでよく観たアーサー・クルーダップさんの演奏方法です。
そして僕はアーサーさんが感じたことを僕自身がすべて感じ取ることができたら、誰も見たことがないすごい音楽家になれると思っていたし、そう話していました。」

本人はやっぱり、黒人たちの音楽に憧れて影響を受けたということにかなり自覚的だったのですね。









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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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