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Sister Rosetta Tharpe ロックのゆりかご(19)

シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe、1915年3月20日-1973年10月5日)はアーカンソー州コットンプラント出身のソングライター、ギタリスト。
1930〜40年代にかけてゴスペルと、ジャズやブルースなど大衆音楽をかけ合わせた演奏で人気を博した。
スピリチュアルな歌詞をリズミカルな伴奏にのせた演奏が特徴的で、宗教と世俗的な境界をまたいで演奏活動を続け、スピリチュアル音楽をメインストリームへと押し上げた。



シスター・ロゼッタ・サープさんは、ゴスペルのアーティストなんだけど、例えばこの1947年にヒットした “Strange Things Happen Everyday”という曲なんて、一般的に想像するゴスペルとはかけ離れていて、ブルース〜ブギウギの影響を強く受けている。
これはもうほとんどロックンロールと言っても言い過ぎでないくらいだ。



実際のところ、ゴスペルとブルース/ブギウギ/リズム&ブルースの音楽的な垣根はほとんどなかった。
そもそも最初にゴスペルを録音したトーマス・A・ドーシーさんは元々はジョージア・トムという名前でブルースマンとして活動していた人だそうだから、ブルースとゴスペルは音楽的には異母兄弟どころか全くの兄弟なのだ。
違うのは、歌の内容。
ゴスペルは神への帰依を歌い、ブルースは俗世間のよしなしごとを歌う。
この“Strange Things Happen Everyday”はこんな歌だ。

教会で人々の声を聴こう
彼らは聖なる道を歩んでいる
不思議なことは毎日起こっている
最後の審判の日まで
不思議な奇跡は起こり続ける
山に登って雄大な景色を観たいのなら
寝そべっていてはいけない
嘘を正しく見極められれば
正しい道をを歩むことができる
ジーザスは聖なる光
暗闇に光を与える
不思議なことは毎日起こっている

“おかしなことが毎日起こっている”なんてタイトルはプロテスト・ソングかと思ったら、イエス・キリストの奇跡を信じなさい、というメッセージ・ソングだったんですね。



シスター・ロゼッタは敬虔なキリスト教徒の家庭に育ち、6歳の頃には母親とともに宣教のための旅に加わり演奏するようになったのだそうだ。
エンターテイメント色が強い彼女の演奏は、その宣教ツアーで聴衆の心をがっちりつかむために磨かれていったものなのだろう。
実際、ゴスペル以外でもラッキー・ミリンダ楽団との共演でブルージーな歌とギターを聴かせるなど広い活動を行っていたようだ。



このエンターテイメント色が強すぎる彼女のゴスペルは、多くの聴衆を巻き込んで熱狂を生み出したと同時に、より保守的なキリスト教徒たちからは、下品で卑しいとも非難を浴びたようで、やがてより清廉で奥深いイメージのあるマヘリア・ジャクソンらに座を奪われていったのだそうだ。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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