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Sometimes it Snow in April



トレイシーは長い戦の後に死んだ
彼の最後の涙を拭いてすぐ
幾分はましな人生だったはず
少なくとも生き残った多くの馬鹿どもよりは
トレイシーを想って泣いてしまったことがよくあった
だって彼はたった一人のともだちだったから
いろんなことが傍らを通りすぎていく中で彼は特別だった
もう一度彼に会いたいと泣いた
けど人生はいつも思うようにはならないもの

4月に雪が降ることもある
ときどき僕はとても落ち込む
ときどき人生が決して終わらなければと思うこともある
でもいいことはずっと続かないってみんなそう言うんだ

(Sometimes it Snow in April / Prince)

4月に雪が降ることがあるのは、南岸低気圧と呼ばれる低気圧によるものらしい。
真冬は大陸から強い高気圧が強く張り出した、いわゆる西高東低の気圧配置になる。
日本海を渡ってきた大陸からの風が海上で水蒸気を蓄えて山脈にぶつかるため、日本海側では雪がたくさん降り、それを超えた太平洋側では乾燥した晴れが続くことになるのだが、その冬型気圧配置が弱まりはじめると、太平洋側では温められた空気が低気圧を作って北上しはじめる。
これが南岸低気圧で、通常は雨になるところが、まだ弱まりきらない大陸性気圧の冷気に触れると雪になる。
4月は季節の変わり目でそもそもが不安定なのだ。



“Sometimes it snows in April”は、プリンスの“Parade”の最終曲。
僕はプリンスはどちらかというと苦手でそんなに日常的に聴くことはないのだけれど、時々無性に聴きたくなることがある。
ザラッとした印象の乾いた音と、生理的に不快感を及ぼすくせに奇妙にくせになる歌が、不思議に心地よく感じるのは、だいたいは不安定な気分のときだ。
4月の気候のように、エアポケットにはまるような不安定感は、おそらくは生命力に溢れた日差しと、その割にギュッと冷え込んだり冷たい雨が降ったりするギャップのせい。
気持ちと体のバランスが崩れるのだろう。
ザラッとした奇妙なファンクが続いたあとにポロッとこういう美しいバラードが流れてくると、その崩れた谷間に染みて、泣けてきそうになる。



桜もほぼ咲き終わり、春爛漫の季節の到来。
無理に元気を出すこともない。
4月に雪が降ることもある。
粛々と受け入れて日々をやりすごす、そういう春もある。







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コメント

[C3460]

名盤さん、こんばんはー。
ほんと美しい名曲です。
かまくらはあたたかい(笑)、いや、ほんとそういう感じですね。
  • 2022-04-18 22:18
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3459]

「スノウ・イン・エイプリル」は泣いてしまいます。
世紀の名曲だと思っています。
美しく儚い、雪のような曲。
かまくらは暖かい。
そんな感じです。

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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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