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Hank Williams ロックのゆりかご(18)

ハンク・ウィリアムズ(本名Hiram King Williams、1923年9月17日 - 1953年1月1日)はアラバマ州マウントオリーヴ生まれのシンガーソングライター。
カントリー音楽の歴史において最も重要な人物のひとりと見なされている。
1947年から、29歳で亡くなった1953年までの短い間に、ビルボードのカントリー&ウェスタン・チャートにおいて、1位になった11枚を含め、トップ10入りした35枚のシングル盤を録音した。





カントリーってもっと能天気な音楽だと思っていたけど、ハンク・ウィリアムズの声に漂うそこはかとない哀愁はどうだろう。
ぎゅっと締めつけられるようなせつなさ、どこか無愛想なのに人懐っこい感じ。
この歌い方っていうのは、プレスリーは明らかに影響を受けていると感じさせる。



カントリーといえば、ヨーデル唱法。
例えばこの“Long Gone Lonesone Blue”。

I went down to the river to watch the fish swim by
But I got to the river so lonesome I wanted to die, oh Lord
And then I jumped in the river, but the doggone river was dry
She's long gone, and now I'm lonesome blue

川の畔へ行ったんだ
魚でも見ようと思ってさ
ところが川に着いたら
あまりに寂しくて死にたくなった
で、飛び込んだんだけど
川の野郎、全然干上がってやがんのよ
あの娘は遠くへ行ってしまったから
ひどく寂しくて憂鬱なんだ


すごい歌詞だよね。
ロバート・ジョンソン並みに絶望感ばりばりで。
で、この“long gone”“now““blue”のサビの箇所のところがヨーデルで歌われる。
“ロォーォーオォーン”“ゴォーォーオォーン”“ナァーアーァゥ”“ブルゥーウ~~~”っていう感じ。
これがものすごく突き刺さるような痛々しさと悲しさを感じるのです。
ジミー・ロジャースの頃にはノンシャランな掛け声だったヨーデルに歌詞が乗っているというのも実は大きな変化だったり。
これはほんと名曲名歌唱だと思う。



それから、かっこいいなと思うのはこういうやけっぱちな歌。

I don't care if tomorrow never comes
This world holds nothin' for me
I've been lonely night and day ever since you went away
So I don't care if tomorrow never comes

明日がもし来なくても
俺には全然関係ない
この世界は俺のことなど
何にも構ってくれはしない
おまえが行ってしまってから
俺はずっと夜も昼間も孤独なんだ
だから、明日がもし来なくても
俺には全然関係ない


この虚無的な姿勢なんてもう、ブルースを通り越してパンクですらあると思う。

こんな能天気っぽいほんわかとしたリズムとのんびりしたハワイアンのようなスライドギターにのせて、こんな絶望的な歌が歌われていたということが僕にはすごく衝撃的だった。
のどかな田舎っぽい音楽だと思いこんでいたカントリーのあなどれなさ。
ただのパーティー音楽や騒々しいだけではないこういう世界観。
ロックという表現が奥深いのはそういう世界観をも内包しているからで、ハンク・ウィリアムズの悲しみや絶望は、確実に後世のロックへと受け継がれていったのだと思う。






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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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