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T-Bone Walker ロックのゆりかご(14)

T-ボーン・ウォーカー (T-Bone Walker, 1910年5月28日 - 1975年3月16日)は、アメリカ合衆国南部テキサス州リンデン出身のブルース・ギタリスト、シンガー。本名はAaron Thibeaux Walker。
最も早い時期にブルースにエレキギターを持ち込んだ人物とされ、モダン・ブルース・ギターの父とも称される。



ブルースに興味を持って間もない頃に、当時から名作とされていた『モダン・ブルース・ギターの父』というアルバムを聴いた。1942年〜47年にキャピトルに録音した曲を集めたレコードだ。
正直、全然ピンと来なくて。
『モダン・ブルース・ギターの父』っていうくらいのものだから、もっとガツンガツンと荒っぽくってグイグイくるような演奏を期待したんだろうね。
なんだか古臭くてゆるゆるした音だなぁ、と思ってそれっきりだった。

こういう音楽がかっこいいなぁ、と思ったのは、ジャズとかもひと通り聴いてみてからあとのこと。
ジャズ的なスインギーなグルーヴに乗るギターの音色がものすごく新鮮で。
あ、これって、ブルージーなジャズっていうか、ジャジーなブルースっていうか、そういうまだジャズもブルースも僕が知っている現代のスタイルになる前の形なんだな、と理解できてから、すごくかっこいいと思うようになった。



この“That Old Feeling Is Gone”なんてすごくスインギーだし、歌そのものは嘆きの歌なのに、ヴォーカルも切羽詰まらずすごく余裕を感じるね。

奏法そのものは大きな音を鳴らすというよりは、単音をちゃんとバンドの音に負けないように響かせるというスタイル。
チャック・ベリーの評伝か何かで、ピアニストのジョニー・ジョンソンの弾くフレーズをギターで真似てオリジナルのものにしたというのを読んだ記憶があるのだけど、その元ネタはおそらくはTボーンさんの奏法だろう。
この単音弾きには、リロイ・カーのコンビだったスクラッパー・ブラックウェルっぽさもあるし、音色の美しさにはロニー・ジョンソンの影響も伺えるけれど、エレキギターという道具がこの奏法を大きく発展させていくことを可能にしたのだ。



“T Bone Jumps Again”なんてインストでラッパがぶいぶい煽って、ほとんどジャンプ・ブルースだったり。
この煽り方、盛り上がり方がすごく粋でかっこいいですよね。

ロバート・ジョンソンのヒリヒリするようなブルースや、マディ・ウォータースの重苦しいブルースとは真反対の、お洒落でスインギーでうっとりするようなブルース。

諸々の歴史的意義はおいといても、とてもクールでかっこいい音楽だ。

Tボーンさんはギター弾きからはリスペクトされているものの、コアなブルースファンからはジャズっぽすぎ、ジャズファンからはジャズと認知されていないという印象がある。

今じゃそれぞれにカテゴライズされて、ジャズはジャズ、ブルースはブルースという演奏のされ方や聴かれ方しかされないのはとてももったいないですよね。

とりあえず神様として祀りあげておこう、っていうだけじゃもったいない、とても耳心地のよくて間口が広くて豊かな音なのに。





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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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