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Woody Guthrie ロックのゆりかご(13)

ウディ・ガスリー(Woodrow Wilson "Woody" Guthrie, 1912年7月14日 - 1967年10月3日)は、オクラホマ州オケマー出身のフォーク歌手・作詞家・作曲家。
ボブ・ディランに多大な影響を与えたシンガー・ソングライターで、プロテストソングの源流となった人物である。
14歳のときに家族が離散し、大恐慌の時代に放浪生活を送る。その放浪のなかで、貧困や差別などに翻弄される労働者らの感情を歌にして演奏した。



ボブ・ディランや、60年代フォーク・ムーヴメントにも大きな影響を与えた「アメリカのフォークの父」ウディ・ガスリー。
進歩的な人々からはアメリカの良心として敬愛される一方で、保守的な人々からはアカの屑として蔑まれることもあり、私生活では妻と子供を置き去りにして放浪の旅を続けるなど現代的尺度で見るとかなりいいかげんな人物だったようだ。

ウディ・ガスリーは生前、約1000曲もの歌を作ったらしい。
そのうちの多くは音源としては残されておらず、歌詞だけが残されていて、そこにはストーリーテリング風のものも多くある。

1928年の頃までは
俺は小さな農場を持ってたんだ
そこで毎年収穫を得て
それを町で売ったものだった
そしてその金で必需品を手に入れ
子どもを育て家族を養った

ところが日照りが続き風が吹き
真っ黒なダストボウルが空を覆った
それで俺は農場を売ってフォードを手に入れ
ガソリンで満タンにして
揺られながら山を越えて
カリフォルニアを目指していったのさ

(Talking Dust Bowl Blues)

オクラホマを出るきっかけとなった1935年の砂嵐についての歌だそうで、この事件はウディ・ガスリーにとって大きな衝撃だったのか、砂嵐についての多くの歌を作っている。
そもそも労働歌や讃美歌から発展した初期のポップミュージックは、わかりやすいフレーズを単純にリフレインしたりするものが多かった中で、このストーリーテリングという歌の作り方は異質だった。
ブルースには物語を歌うものあるけれど詩的なフレーズに要約されているものが多く、いつどこで何がどうしてどうなって、と延々と物語を綴る手法は教会の説教師や街頭でニュースを芝居にして伝える芸人のようなところからの影響ではないだろうか。
かつてガスリーは「2つ以上のコードを使う奴はテクニックをひけらかしたいだけだ。」と語ったそうで、その発言からもわかるとおり、彼の音楽は、音楽というよりはメッセージを伝える手段のひとつだったのだろう。
メッセージというと重くなってしなうので、もっと平たく言えば音楽瓦版のようなもの。
河内音頭や音曲漫才など、日本にもニュースを庶民にわかりやすく伝えるための民衆芸能があったのだけど、ウディ・ガスリーの歌は言わばアメリカ版河内音頭だ。



対象が庶民で、ネタが時事問題、その多くが政治に関わるものだと、どうしてもそこには庶民にウケるイジりやヒネりが仕込まれるわけで、例えば先のトーキング・ダストボウル・ブルースはこんなふうに〆られる。

なんとかカリフォルニアにたどり着くと
腹ペコで一歩も進めない
なけなしの金でジャガイモを買い
それでワイフがシチューを作った
水みたいに薄い奴さ
シチューを透かして雑誌が読める程さ
これ以上ひどいことはないといっても嘘ではない
この辺の政治家だって
きっと納得するはずだよ

左翼の活動家だったと評価も、本人にそういう高い志があって歌っていたというよりは、ウケるネタをどんどん仕込んでいるうちにそっち方面へ行ってしまった、というのが本当のところではないだろうか。

こういう斜めからものを見ておちょくってみる諧謔精神や、時には我慢できないんだと直截的に物申す姿勢。
そういうウディ・ガスリーの精神は、ボブ・ディランやジョン・レノンにも受け継がれてていったのではないか。
そういうものは今はなかなか流行らないけれど、その精神は今もロックンロールのスピリットの奥底に埋め込まれているはずだと思いたい。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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