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Aguas De Marco



棒切れ 石

道の終わり

切り株の残り

少し一人ぼっち



硝子の銀

人生 太陽

罠 銃



樫 花開くとき

ブラシの中の狐

木の結び目

ツグミの歌



風の森

崖 滝

擦り傷 しこり

何もない



自在に吹きつける風

坂道の終わり

光線 がらんどう

予感 希望



川岸の会話

三月の水

歪みの果て

あなたの心の歓喜



脚 地面

肉体と骨格

道の鼓動

スリングショットの石



魚 閃光

銀色の輝き

闘争 賭け

弓の射程距離



井戸のベッド

描線の終わり

失意の表情

失われたもの

見つけたもの



槍 棘

突端 釘

滴り 雫

尻尾の先っぽ



トラック一台分の煉瓦

やわらかな朝の光の中で

放たれた銃弾

夜の死の中で



(Aguas De Marco)



朴訥として静かな演奏と、瑞々しくイマジネイティヴな言葉の流れ、呟くような歌声。

どこか鎮魂というか、ささやかで個人的な願いや祈りのような気持ちも込められているような、心の奥底にそっと手を添えるような。



歌詞は、意味ありげで意味がなさそうな単語がずらずらと羅列されていく不思議な感じで、たまに抽象的な単語がすっとはさまるところがより奇妙さを増幅させる。

なんについての歌なんだろう?

そもそも「三月の水」ってどういう意味なんだ?



改めてこの不可解な羅列を眺めていくと、なんとなくスライドショーのように、いろいろな画像がシャカシャカと動いていくような流れを感じる。

心象風景が順に映像として流れていくような。

浮かんでくる光景は、荒涼とした平原であったり、濃密な森だったり、川辺りだったり、戦場となった町の瓦礫だったり。

その様々な光景の奥底に、目には見えない水脈のようなものが流れているような感じがしてくる。

チョロチョロしたせせらぎがやがて水嵩をましてゴウゴウと音を立てて堰を切っていくように。

あぁ、水というのはそういうことか。

雪解け水がせせらぎになり川になり海へ流れるような。いや、ボサノヴァの故郷ブラジルは南半球だから、夏の終わりの雨か。

一人の人生の様々な局面、あるいはたくさんの人々の様々な人生、その舞台の基調には静かに、あるいは高らかに、水の流れが横たわっている。ある意味運命的ともいえるほどに深く大きく当たり前に存在している大きな流れがある。

人生の様々な局面や様々な人々の人生は、この大きな流れの中で翻弄される木の葉のようなものに過ぎない。

そういう諦念と、だからこそ意味があり、とても貴重なものだというような感情もうっすらとにじませているような、そんな歌なのだろうか。



個人の解釈です。全然的外れなのかも知れません。

でも、僕はそのように感じたのです。

ボサノヴァという音楽にはなんとなく苦手感があって。

抑揚なく淡々と流れていく演奏は確かにBGM的には悪くないのだけど、なんとなくひっかかりが薄くて咀嚼感がなくて、まるでそうめんのような歯ごたえのなさ腹持ちの悪さを感じてしまうのだ。

ただ、この流れの中に身を委ねてしまえば、とても心地よい。

水の流れに抗うか、身を委ねるか。

そういうものを素直に受け入れるべき歳頃にさしかかってきているということだろうか。



南半球では夏の終わりだけど、北半球の三月の光景にもこの歌はとてもよく合う気がする。

雪解け水がやがて滔々と大地を横たわる大河になっていくような、広く大きな、それでいてとてもささやかで個人的で濃密な音楽の空間が立ち上がっていく感じが、春の匂いのようだと思う。







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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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