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Count Basie ロックのゆりかご(12)

カウント・ベイシー(Count Basie、1904年8月21日 - 1984年4月26日)は、ニュージャージー州レッドバンク出身、ジャズピアノ奏者、バンドリーダー。
グレン・ミラー、ベニー・グッドマン、デューク・エリントン等と共にスウィングジャズ、ビッグバンドの代表奏者に挙げられる。



カウント・ベイシー楽団がデッカ・レコードに遺した1937年〜39年にかけての録音は、ジャズもブルースも一緒くただった戦前の黒人音楽のひとつの到達点であり、ビートルズの偉業にも匹敵するような文化遺産だと思う。

1920年代、アメリカでは禁酒法が布かれていた。
全米の至るところで公には飲酒が禁止され、酒場で歌い演奏していたミュージシャンたちも職を失うことになってしまったのだ。
そんな中で、トム・ペンターガストというギャングの親玉のような男が実権を握っていたカンザス・シティだけは、公然と飲酒が許可されてた。
仕事にあぶれた腕利きのミュージシャンたちは、当然のようにカンザス・シティに集まる。
その中に、後にオール・アメリカン・リズム・セクションと呼ばれるようになるフレディ・グリーンやジョー・ジョーンズ、ウォルター・ペイジといった強者たちも含まれていたのだ。
彼らは、荒くれた酔っぱらいたちを相手に腕を磨き、禁酒法が廃止になった1933年にはカンサス・シティを離れ、ニューヨークへ進出していった。



コロコロと転がるベイシーのピアノ、レスター・ヤングのぶっぱなす意気揚々としたソロ、お次はトランペットのバック・クレイトン、続いてトロンボーンのジョージ・ハイント。火花を散らすような丁々発止のバトルがリズムに乗ってどんどんと転がっていく。
オール・アメリカン・リズムセクションと呼ばれたリズム隊による小気味良いリズムは、ときにステディに、ときにはイケイケのオラオラで音楽を小回りのきく重戦車のようにハンドリングする。
そしてジミー・ラッシングの野太くもどっぷりブルージーなヴォーカルがまたどでかい大砲のように凄い。
華麗で朗らかでチャーミングで、かと思えば一転豪快にガハガハと大笑いするようなベイシーのピアノのリードの元に、あるときはおおらかに、またあるときは繊細に、熱のこもったプレイを繰り広げる楽団の演奏には、どんな気分だってすっかりご機嫌になってしまうのだ。
スイングどころじゃない、この一触即発感とノリの良さはロックでロールなかっこよさだと思う。



この時期のベイシー・サウンドには、本当になんでもあるのですよね。
ブギウギの楽しさと、ブルースのたくましさ、ゴスペルの敬虔さと、ジャズの一触即発電光石火的なスリル。そして、今この瞬間をぶっ飛ばす、ロックンロール的な爆発力。

フィールドハラーやニグロ・スピリチュアルからの100年近いブラック・ミュージックの伝統をすべて踏まえた上で熟成された彼らの音楽は、ロックンロールとリズム&ブルースの大いなるゆりかごだった。




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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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