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Gus Cannon ロックのゆりかご(5)

ガス・キャノン(本名Gustavus Cannon、1883年9月12日ー1979年10月15日)は、ミシシッピー州レッド・バンクス生まれのジャグ・バンドのバンジョー奏者。
子供の頃からお手製のバンジョーを弾き、1915年頃から10年間余りバンジョー・ジョーの芸名で薬を売り歩くためのメディスンショーに参加して全国を巡業。
ノア・ルイス、アシュリー・トンプスンらとキャノンズ・ジャグ・ストンパーズを結成して1928年から30年までに29曲の吹き込みを行なった。



そもそもジャグ・バンドとは、ウイスキーの瓶や洗濯板、ノコギリなど、身の回りにあるもののから作った手製の楽器で演奏する形態のバンド。そこにバンジョーやカズーが入ることが多い。
楽器としてのノコギリ(ミュージカル・ソー)は関西の人には横山ホットブラザースの♪おーまーえーはーあーほーかー、でおなじみですが、叩いたり曲げたりして胡弓のような音を出すもの。
洗濯板(ウォッシュボード)は引っかいてリズム楽器として、ウイスキーの瓶は、口に息を吹き込んで低音楽器として使用される。そもそもはこのウイスキーの瓶のことをジャグと呼んだのでジャグバンドと呼ばれたそうだ。



ハッピーでちょっとユーモラスな“Walk Right In”。
歌われている内容はたわいのないダンスの手順のようなもので、黒人霊歌や賛美歌と同じようにリフレインの繰り返しで構成されている。
フォークダンスの曲のようでもあり、カントリーやフォークの系統のアメリカ音楽の原型が見えるような演奏だ。

ガス・キャノンは薬を売り歩くメディスン・ショーのメンバーとして音楽の腕を磨いたそうで、町を訪れて商売を始める前には、このような楽しい曲を演奏して客を集めたのだろう。
録音は1920年代後半だけど、恐らくは1900年代初め頃には、このような演奏が行われていたのだろう。



録音された29曲のなかには、ブルースっぽいものも数多くある。
例えば“The Rooster's Crowing Blues”。
ギターではなくバンジョー、ブォッ、ブオッという低音はジャグ。
デキシーランドジャズでは一番低い音を担うのはチューバで、その音を模したということがよくわかる。もちろんそのルーツを遡れば軍楽隊ということになる。
コントラバス(ウッドベース)を低音楽器として使うようになるのは、もう少し先のビッグバンド・ジャズの頃からのようで、そもそもコントラバスなんて楽器はかなり高価で巡業稼業には不向きだったんでしょうね。

今はもうほとんど残っていない演奏形態なだけに、進化の過程で絶滅した種を見るようで興味深い。



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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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