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Elvis Presley ロックのゆりかご(1)

エルヴィス・プレスリー (本名Elvis Aron Presley, 1935年1月8日 - 1977年8月16日)は、ミシシッピ州テュペロ出身。
全世界のレコード・カセット・CD等の総売り上げは6億枚以上とされている「世界史上最も売れたソロアーティスト」の第1位。
「キング・オブ・ロックンロール」と称される。



一番衝撃を受けたのは、エルヴィスだった。
1955年ではなく1999年の話。
初期シングル6曲をボーナストラックに追加して再発されたエルヴィスのファーストアルバム「エルヴィス・プレスリー登場」をたまたま聴く機会があって、エルヴィスって実はこんなにかっこよかったんだっ!って衝撃を受けたのだ。
それまでも当然エルヴィスの歌を耳にしたことがなかったわけではないけど、ラスベガス的ショービジネスに魂を売った挙げ句太って死んだロートルのスターだとしか思っていなかったから、そのかっこよさにはまるで気づいていなかったのだった。



Blue Suede Shoesの最初のカウントからもう、背筋がゾクゾクするようなかっこよさだ。
続々と並ぶI Got A Woman、Money Honey、Tutti Frutti・・・そういったR&Bのカバーも、カール・パーキンスやレイ・チャールズ、クライド・マクファターらの原曲よりもぶっとんでいてエキサイティングでスリリングで。

その一方でJust Because、Tryin' to Get to You、 I'm Gonna Sit Right Down and Cry (Over You) といったカントリー・ナンバーや、I'm Counting On You、I Love You Because、 I'll Never Let You Go (Little Darlin')、そして当時ですら20年も前のヒット曲だったBlue Moonといったスロウ・ナンバーがまたすごくセクシーでかっこいい。
かっこいいという形容詞以外に浮かんでこないのが我ながら情けないくらいかっこいい。
甘くて震えるような声で歌われるそれらのロックンロールやバラードは、「なるほど、確かにこの人はキング・オブ・ロックンロールだ。」と納得させられるのに十分なエネルギーとテンションを備えていた。
その瞬間に高熱を発して輝きを放つような類いの感覚が確かにあった。





よく「ビートルズがすべての始まりで、ビートルズがいなければ今のロックは存在しない。」みたいにビートルズを賛美する論調があるけれど、それは歴史を知らない浅薄な考えで、ビートルズの音楽には過去のロックンロールやR&Bの遺伝子が脈々と受け継がれている。

これはエルヴィスも同じで、突然変異的にエルヴィスがああいう音楽を創造したわけではなく、その背景にはアメリカの豊潤な音楽文化がある。
ビートルズやエルヴィスが果たしたのは、ごく一部の人たちにしか届いていなかった音楽のマーケットを爆発的に拡大する役割だ。
若くてハンサムなエルヴィスが熱狂的にセクシーに歌ったからこそ、ロックンロールはブレイクした。
極端を承知で言えば、エルヴィスがデブの醜男だったらロックンロールの隆盛はなかった。ロックンロールがメジャーになるためのきっかけはエルヴィスでなければならなかったのだ。

ロックンロールという音楽は、そもそもをたどっていけば黒人たちの間で歌い演奏されていたブルースやジャズが融合し発展したリズム&ブルースに、白人のカントリーの要素を取り込んだものだと言われている。
1954年にはビル・ヘイリーが、55年にはチャック・ベリーがロックンロールと呼ばれる音楽を演奏してはいるものの、ビル・ヘイリーは元々はカントリーを演奏していた髪の薄いおっちゃん、そしてチャック・ベリーは差別の激しかった黒人であって、それなりに多くの支持は集めたではあろうもののひとつの局地的な支持を得る音楽の一形態に留まって、全米中の若者たちが熱狂するような騒ぎにはならなかった可能性が高い。
それを可能にしたのは、エルヴィスが白人の若者で、しかも男前だったから、なのだと思う。
その熱狂の果てに、東洋のおっさんもエルヴィス親しみ、ロックンロールに衝撃を受け、少しだけ人生を破綻させる、という現象がある。



それではエルヴィスのようなスーパースターはいかにして生まれたのか。
そのことを知るには、少なくとも更に時代を30年遡っていく必要があるようだ。
1920年代、第一次世界大戦戦勝のあとの好景気と産業化で消費型社会が幕を開けた時代。ラジオ放送が始まり、現代ではSP盤と呼ばれる78回転のレコードが普及し始めた頃だ。







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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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