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音の食卓〈ぶり大根〉

「焼き鮭」「野菜炒め」「ポークソテー」「鶏唐揚げ」「エビフライ」「炊き込みご飯」「ポテトサラダ」「ほうれん草のごま和え」などなど、一般的に料理の名前は“食材+調理方法”で表されることが多い。
ところが一部に、“食材の名詞を並べただけ”の料理名が存在するのですよね。
曰く「ハムエッグ」「豚キムチ」「じゃがバター」「えのきベーコン」「じゃこおろし」・・・。
これら“食材の名前を並べただけ”の料理名の意味するところはつまり“絶妙のコンビネーション”ということだと思う。

そんな絶妙のコンビネーション料理で個人的に最強だと思うのが「ぶり大根」だ。

すっと箸で割けるほどにやわらかく、ぶりと醤油やみりんの旨みがしみた大根。
旨みを出して尚、ほろほろと崩れるぶり。
大袈裟でなく、日本人でよかったと思える、ほっこりと落ち着く味わいです。
田舎なんてないのに、田舎が懐かしくなるような。



名コンビや名デュエットは数多ありますが、音楽界の「ぶり大根」といえば、エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングで決まりです。


Ella and Louis / Ella Fitzgerald abd Louis Armstrong

ぶり大根と同じく、田舎くさくてもっさりしてるけど、ほっこりしてとても気持ちが和らぐ歌唱と演奏の数々。
さっくりと味がしみたエラ、旨みをじゅうぶんに出しながらも存在感のあるルイ。そしてそれを後ろで支えるオスカー・ピーターソンやレイ・ブラウンの役割は醤油とみりんだ。

このほっこり加減の素は、フィッツジェラルドさんとアームストロングさんとオスカー・ピーターソン・トリオ、この5人の間の絶妙な距離感だと思う。
お互いがお互いの歌や演奏をしっかりと受け止めながら反応していく感じ。
前提としてお互いへの信頼があって、もちろんいい演奏とは当然そういうものなんだけど、よりお互いの感情が親密というか、お互いの体温を感じながら演っているような感じっていうか。
しかもベタベタせずに。



日に日に冷え込みがきつくなっていく冬の日を、ほっこりと温めてくれるぶり大根。

あぁ、いよいよ年の瀬ですね。





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コメント

[C3450]

ローリングウエストさん、こんばんは。
おいしいぶり大根、極上の冬の味覚ですね。
絶妙のコンビネーションです。
  • 2021-12-18 19:10
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3449]

ぶり大根、美味しいですよね。あの味が染みわたった中に適度な硬さの触感がいいです。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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