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音の食卓〈ビスケット〉

シュークリームのざっくりふわとろと対極にあるもの。
サックリと軽い歯ごたえのビスケット。

砂糖の甘みではなく穀物の持つ、噛むほどに湧きあがるような甘み。
子供の頃、今ほどおいしいスナック菓子がたくさんなかった中で、ビスケットは高級菓子だと思っていた。
森永のマリーとかチョイスとかムーンライトとか、ああいうの。
今食べてもやっぱりおいしいんですよね。
長く愛されてきた基本型だからこその深い味わいというか、シンプルだからこその無駄のなさというか。
あのマリーっていうネーミングはやっぱりマリー・アントワネットの「パンがないならビスケットを食べればいいじゃない」発言に由来するものなんだろうか。

ま、それはともかく。

なんとなくビスケットの雰囲気があるのがプリテンダーズのクリッシー・ハインドさんだ。

基本は質実剛健、シンプル&ハード。
「余計なモンなんていらないのよ。」と、小麦粉とバターと砂糖、牛乳、そういうシンプルな材料だけで焼き上げたビスケット。
硬派で庶民的、でもどことなく気品があるのですよね。
パンキッシュなシャウトをしてみても、どこかに英国由来のトラディションが感じられる。


The Pretenders Ⅰ / The Pretenders

プリテンダーズに関してはけっこう思い入れがあります。
82年~83年、高校1年~2年にかけての頃だったかな。
ベストヒットUSAとかFMラジオとかそういうものを手掛かりにいわゆる洋楽を聴きはじめた頃。
その頃って、どっちかっていうと長髪兄ちゃんたちの大袈裟なくらいのポップなロックが主流で、ジャーニー、フォリナー、エイジア、そういう奴ね。
或いはもうちょっとチャラチャラしたアイドルっぽいのか、お洒落っぽいのか。
もうちょっとハードにストレイキャッツやクラッシュになると、かっこいいとは思ったけどちょっとツッパリ臭がして、100%しっくり来たわけではなかった。
うーん、洋楽ってこんな感じなのかー、と思っていたところへ流れてきたプリテンダーズにビビッと来たのです。
「俺の聴きたいロックはこれだっ!」って。
友人たちもプリテンダーズについてはまるで知らず、「俺が自分で発見した」という優越感をなんとなく感じたのです。
誰かに教えてもらったのではなく自分で発見したお気に入りのロックバンド第1号。
ま、それだけのことだけど、高校生にとっては、そういうしょーもないことが大事だったのです。

最初に聴いたのはサードアルバムの「Learning to Crawl」だったけど、レンタルしてこりゃかっこいいぜーってなって、勢いでファーストとセカンドもレンタルして聴きまくった。
キャリアの全アルバムを揃えたのも多分プリテンダーズが最初だ。



今聴いてかっこいいよね。
シャープでハードで、粗っぽくて。
サックリした歯触りと、噛むほどに出る穀物の甘み。
当時は気づかなかったけど、ほんの少しミルクっぽい柔らかさがある。





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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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