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音の食卓〈焼きそばパン〉

通っていた高校は、高い丘の上にあった。
校門をくぐってから、200mくらいある登り坂を登らなくっちゃいけない。
毎日遅刻寸前で息を切らせて走り込む僕にとってこの校門の向こうの坂は、遅刻でいいやと諦めさせるには十分な存在だった。

坂の入り口、校門のすぐ手前には小さなパン屋さんがあって、学校の帰りにここで買い食いをするのは楽しみのひとつだった。

中でも記憶に残っているのは焼きそばパンだ。
ホットドッグ型のロールパンにスリットを入れてこんもり盛られたちょっとスパイシーな焼きそば。青のりと紅しょうがも乗っている。
80円のクリームパンやジャムパンを買うくらいなら、断然120円の焼きそばパンだった。

友人たちとしょーもないことを駄弁りながら焼きそばパンをかじる帰り道。
目の前のことで手一杯であくせくして、どーせつまんない大人になるんだと思っていた。

また○○先輩にしょーもないことで説教食らったわ。
ほっとけって、アイツ他に相手されてへんから俺らに偉そうにしよんねんって。
しょーもなー。
どーせ生きてても、そーゆーしょーもないことばっかあんねやろな。
ほんま、そやな。
もうちょいましな高校行けてたらな。
ショーライゼツボーテキかもな。
どーでもええわ。
あ、でも死ぬまでにセックスくらいはしときたいよな。
アホか、お前。
いや、でもそう思わへんか、まじで、女とやったら人生変わるらしいぞ。
そんなんないって。
だいたいお前と誰がしてくれんねん。
いや、この際誰でも。
じゃあ○子は?
いや、それは無理。

・・・そんな会話と焼きそばパン。

小遣いケチってジュースは買わずに水筒のお茶をグイッと飲み干す。



丘の上の校舎からは、町が一望できた。
屋上は立ち入り禁止だったけど、廊下の壊れた窓から出入りすることができた。
ちっぽけな町、どうでもいい日常。
さっさとそこから出て行きたかったけれど、その方法はわからなかった、というか、出て行く勇気がなかった。

そんな高校生活の一番の心の拠り所が、RCサクセションだった。


Please / RCサクセション

授業をサボって屋上でタバコをふかしたことはないけれど。
清志郎とチャボは、いつも心の支えだった。



この平凡で退屈な日々を良しとするには、僕は何もかも未経験過ぎた。

まだスタート地点にすら立っていないのに、こんなところで埋もれてしまうわけにはいかない。
だからこそここを出ていかなけりゃ。

そんなことばっかり思っていた日々が、焼きそばパンと重なる。




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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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