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音の食卓〈幕の内弁当〉

幕の内弁当。
若い頃はピンと来なかったんだけど、年をとってちょっと、いろんなものを少しずつ、っていう楽しみがわかるようになってきた気がする。

エビ天、鶏の煮物、ポテトサラダ、きんぴら、わかめとちりめんの酢の物、佃煮、菜っ葉の煮浸し、お新香・・・小さな間仕切りに少しずつちまちまと盛られた色とりどりのおかず。
いろんなものの断片を少しずつ切り取った箱庭的世界。
幕の内弁当には、世界が詰まっている。

ルーツをたどれば、芝居の幕間に食べるお弁当なのだそうで、始まりは江戸時代の後半頃らしい。
芝居を観ることと同じくらい、幕間のお弁当が何よりのエンターテイメントだったのは、今でいえばディナーショーみたいなものだったんだろうな。
寛いだ品のある空間、贔屓のスター、おいしい食べ物。
そういうものに感じる愉悦感というものは、きっと今も昔そう変わるものではないのだろう。



音楽の世界の幕の内弁当といえば、ザ・バンドだと思う。
伝統的なアメリカンミュージックをベースに、色とりどりの世界の断片を詰めこんだ音楽。
自分のルーツでもないのにどこか懐かしく、ひとつひとつに吟味された素材と手の込んだ技を注ぎこんだ料理のひとつひとつに深い味わいがある。


Stage Fright / The Band

ブルースと、カントリーと、ジャズ、ブギウギ、ホンキートンク。リズム&ブルースにファンクにロックンロール。

様々な音楽のエッセンスを、ぐつぐつ煮込んだりカリッと焼いたり、旨みを凝縮させたり染み込ませたり。

ザ・バンドのメンツの手にかかれば、なんだっておいしくなる、そんな魔法のような音楽。

ザ・バンドらしさの基準をどこに設定するかは意見の割れるところかもしれないけど、ファンキーなもの、イケイケのりのりのものから、うるっとくるもの、ほっこりするものまで、ザ・バンドの音楽的体力という点では僕はこの“Stage Fright”がザ・バンドらしさが一番するアルバムだと思う。

若い頃聴いたときは「枯れてる」「渋すぎる」という印象だったけど、いやいや、なかなかに尖ってるし跳ねてるし、かと思えば味わい深いし。

これからも味わうたびに新しい発見がありそうでワクワクする音楽です。



ハンバーグやステーキやギョーザやラーメンももちろん大好きなんだけど、こういう慈味が味わえるというのは、大人になってよかったことの大きなひとつだろうね。







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コメント

[C3446]

名盤さん、こんばんはー。
年はとりたくないと思ってたけど、年を重ねて良さがわかってくるものもありますねぇ。
ザ・バンドも幕の内弁当も、じわじわと好きになって、今は大好物です。
  • 2021-10-16 22:50
  • goldenblue
  • URL
  • 編集

[C3445]

ぼくも歳を重ねてから幕の内弁当の魅力が分かってきました。
買う事よくあります。
お腹に優しい感じもありますしね。
吉田拓郎全盛時、ザ・バンドをバックに従え、ツアーを行う計画があって交渉は進んでいたそうです。
ザ・バンドがビッグになりすぎて実現しなかったみたいですが。
拓郎ファンとしては興味深い話です。

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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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