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◇正しい方向をきちんとキャッチするアンテナ

西の魔女が死んだ (新潮文庫)

西の魔女が死んだ /梨木 香歩

爽やかで心地よい、のんびりした陽射しの一日。
中学生になってから学校に行けなくなったまいが、心のリハビリに“おばあちゃん”の家に行くことになったのは、今日みたいに爽やかな陽気の5月のことだった。
“おばあちゃん”は魔女の家系なのだ。そしてまいは、おばあちゃんと魔女の修行を始める。


精神力をつけるための基礎トレーニングが必要だというおばあちゃんに、まいは聞く。
「精神力って、根性みたいなもの?」
「根性という言葉は、やみくもにがんばるっていう感じがしますね。
おばあちゃんの言う精神力って言うのは、正しい方向をきちんとキャッチするアンテナをしっかりと立てて、身体と心がそれをしっかりと受け止めるっていう感じですね。」

この本の、このくだりがとても好きだ。


梨木香歩さんの「西の魔女が死んだ」。
おととしくらいだったかな、映画が評判になって「あぁ、良さそう」と思いながら見逃して(そもそもほとんど映画は見ないのだ)たら文庫本が出ていたのでつい何の気なしに手に取った本。
40過ぎたおっさんが読むにはあまりにもソフトな物語ではあるけれど、心豊かに生きることへの言葉が、さりげなくあふれていて素敵だった。
これはさりげなく家のどこかに置いておこう。いつか娘が手にとってくれればいいな、なんてね。


先日、うちの娘は学校の図書館から借りていた本を返しにランドセルに詰めて持っていったのだが、返さずに持って帰ってきたらしい。
「返却日が明日になっていたから返さずに持って帰ってきた。」という娘を、妻は「なんでわざわざ持って帰ってくるんやろ?重たいのに。返却日までに返したらええやん。ほんまあの子はボーっとしてる、どんくさい。大丈夫かいな。」と苦っていた。
でもね、それくらいどんくさくて、ボーっとしているくらいでいいんじゃないか、と僕は思う。
現実的に賢く立ち回らなきゃいけないことは、これから先、生きていく上できっとたくさん出てくる。そんな時、娘のどんくささはきっとハンディになるのだろうという気がする。
でも、だからといって今のうちから賢く立ち回ることだけを覚えていくのは、最終的に賢い判断力を養うことにはならないのではないかと思うのだ。賢く立ち回ることよりも、自分はどう思ったのかを大切にしてほしい。きっとそのことが、“おばあちゃん”のいう“正しい方向をきちんとキャッチするアンテナ”を育てることになるんじゃないかと思うから。




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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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