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音の食卓〈まぐろ〉

みんな大好きまぐろ。
しっかりとのった脂の旨みともっちりした食感。
トロや大トロなんて何年も口にしていないとはいえ、普通の赤身やネギトロでさえ、お魚の王様の風格があります。

子供の頃、まぐろはすごく高価なごちそうだと思っていました。
鉄火巻とか大好きだったんだけど、父が「刺身やお寿司は生物で子供にはよくないから、ぎょーさん食べたらあかんのや。」と真顔で言っていて。
僕たち兄弟はすっかりそれを信じ込んでいて、少しのまぐろをありがたく味わいながらいただいていました。
その父の話を大学生くらいまで信じ込んでいて、真顔で友人に話したら思いっきり笑われた。
何のことはない、寿司屋で高いまぐろなんぞ子供にばくばく食われたらたまらんわっ、てことだったんでしょう。
今となっては笑い話ですが。

まぁそんなことはともかくだけど、そのせいかまぐろには大人の食べ物という印象が今もあります。
ガツガツ食らうのではなく、脂の旨みをじんわり噛みしめて、もっちりした食感をしっかりと味わって。



大人の味わい、堂々とした佇まい、しっかりとのった脂、もっちりした食感、というところで連想したのはブルース界の巨星、アルバート・キングさんでした。


The Best of / Albert King

この巨体の存在感。
荒海で揉まれてきたからこその、ちょっとやそっとではびくともしないタフさとパワーを備えた充実度や完成度の高さはまさにキングの風格だ。



アルバートさんを含め、ブルース界には三人の偉大な「キング」がいた。

BB・キングはゴスペルやジャズの匂いがして全体に朗らかでおおらか。
意外とどんな料理にもよく合う柔軟さも兼ね備えつつ、どっしりと風格がある感じは、例えるならば鯛だろうか。

フレディ・キングは逆に濃厚で脂がのっていて、歯ごたえがあって、癖が強い。
これは鰹だな。
北の海で脂を蓄えて南下してきた戻り鰹。

そしてアルバート・キングが鮪。
しっかり脂がのっているけれど、まろやかで旨みがある。
独特の鉄臭さもまた味わいのうち。
ご飯によく合う。もちろんお酒もすすむ。いくらでも食べられそうだ。



いや、三人とも見事な風格です。


でも、子供の頃からこんなものたくさん食べさせちゃいけない。
こういう旨さを知ってしまうと、ハンバーグや唐揚げでは物足りなくなってしまうもの。
父の言っていたことは案外正しかったようだ。










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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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