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音の食卓〈焼き鳥〉

大学生の頃、レンタルレコード店と居酒屋で掛け持ちのアルバイトをしていた。
居酒屋の仕事は主にはホール係だけど、忙しい日は調理のお手伝いもするし、開店前には仕込みの手伝いもする。

辛かったのは、焼き鳥の仕込みだ。
半解凍の鶏モモ肉を3cm角くらいにゴリゴリと切っては、ひたすら串に刺していくのだ。
肉は凍ってて冷たいし、指先がかじかんできてだんだんとマヒしてくる。
単純作業に飽きてぼぉーっとしてきた頃に、指先を串でブスッと突き刺してしまったりするのだ。

仕込んだ焼き鳥をバットに並べてカウンターの下の冷蔵庫へ。
カウンターで焼き鳥を焼くKさんは、山口冨士夫みたいなぎょろっとした目玉に昭和のヤクザみたいなパンチパーマの出で立ちで、客の会話に相槌を打ちながら串を炭火の上でくるくると回す。
そのいかにも職人っぽい仕草がかっこよかった。


Morning After / J Geiles Band

Jガイルズバンドは焼き鳥だ。
無口で頑固な職人がねじりハチマキで黙々と焼いているその焼き鳥は、炭火で焼いてるっ!っていう感じがプンプンする。
ピーター・ウルフのしゃがれた声やマジック・ディックのスモーキーなハープ。
セス・ジャストマンのキーボードはちょっと甘口のタレ。
昔ながらの古いR&Bをぎゅっとタイトに引き締めてシンプルにプレイするスタイルを中心にしつつ、どブルースから南部っぽいもの、レゲエ、モータウンやガールズグループのカバーまで色とりどりの楽曲は、モモ肉をメインに、ささみ、砂ずり、ハツ、なんこつとスタイルもバラエティーに富んでいるのと似ているし、マニアックにならずポップで万人受けするけれど、大衆におもねらず職人としての矜持を貫く感じも実に焼き鳥っぽい。



焼き鳥といえば、串から外しちゃう人がいるけど、僕は串からかぶりたい派。
串があろうとなかろう味は変わらないはずなんだけど、なんか違う気がするんですよね。
ピーター・ウルフのソロが、Jガイルズバンドの音と似て非なるように、やっぱり串があっての焼き鳥なんじゃないのか、と思うのです。








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golden blue

Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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