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音の食卓〈串カツ〉

大阪の京橋駅の東側界隈には、昭和の名残のような立ち呑み屋がいくつもあって、とりあえず安くて軽く一杯飲むにはちょうどいい。
ここなら、まん延防止なんとかがあってもサッと一杯飲んで帰りやすい。

今はもうすっかり住宅街やマンションに変わってしまったけれど、戦後の経済成長期にはこの界隈はいくつも大きな工場が立ち並び、労働者たちですごく賑わっていたらしい。
この地域には、戦前まで日本軍の兵器工場があった。
戦時中、これらの工場は当然の如く米軍の空襲の標的とされ、終戦直前にまで渡って幾度となく爆弾が落とされ、終戦直後この辺りはまさに焼け野原だったのだそうだ。
焼け野原の広い敷地に鐘紡や松下などの工場がいくつも立ち、地方からたくさんの人々が寄せ集められる。労働者の多い町では飲み屋街が発達する。
70~80年代にかけて、工場はより広い敷地を求めて次々と移転し、跡地にはマンションが立ち並ぶようになり、やがて労働者の減少とともに飲み屋街は活気を失っていったのだけど、この地域に手が回るまでにバブル崩壊したせいか、今でもしぶとく営業している立ち呑み屋がいくつもあって、昭和の香りを漂わせているのだ。

立ち呑み屋へ行くと、必ず注文するのは串カツ。
海老、豚肉、赤ウインナー、白身魚から、椎茸、蓮根、玉ねぎ、アスパラまで、とにかくバラエティー豊かなのが楽しい。
サクッとした食感と、中具の絶妙なバランス。
ソースはもちろん二度漬け禁止だ。
これはコロナ云々よりずっと前からのこと。

仕事終わり、なけなしの日当で、串カツ数本とビールをジョッキで2杯ほど。
30分も居れば長居な方で、くいっと飲んでサクッとつまんで、それを明日の糧とする。
そういうたくさんの労働者たちが今の豊かな社会の礎を気づき上げたのだということに思いを馳せ、また自分自身もそこへ連なる一員なのだということに誇りを感じたりしながら。
こういうときのアテは、絶対に串カツじゃなきゃいけないとなぜか強く思うのです。



先日、モータウン・レーベルのヒット曲がたくさん入ったオムニバス盤を聴きながら、「これって串カツ!」って思ったんですよね。


Motown Greatest Hits / V.A

次々と流れてくるポップなヒット曲の数々、、、曰くシュープリームス、テンプテーションズ、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ、マーヴィン・ゲイ、エドウィン・スター、バレット・ストロングにメアリー・ウェルズ、マーサ&ヴァンデラス、グラディス・ナイト&ザ・ピップス、、、歌い手が変わるたびに少しずつトーンも変わる。でも全体的なリズム感やテイストは全部統一感があって。
これって、串カツの、衣やソースの統一感と、中具のバラエティーの見事なマッチングとおんなじだなーって。

そういえば、モータウンの故郷・デトロイトも工業労働者の町だ。
南部から吸い寄せられるように北部へ出稼ぎ出た黒人労働者たちで最盛期には200万人もの人々が暮らす大都会だったデトロイトで、モータウンのサウンドは生まれた。
創設者のベリー・ゴーディーもゼネラルモーターズで働く労働者だったのだ。







ただの肉や野菜が、サクッとした衣を纏うことで都会的な味わいへと姿を変える。
そのポップな味わいやビート感が明日への活力になる。
つまり、串カツはソウルだ。





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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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