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音の食卓〈焼き鮭 /焼き鯖〉

ホカホカのお米に焼き魚と味噌汁。
日本人に生まれてよかったと思う。

焼き魚の中でも一番はやっぱり鮭。
こんがり焼けた鮭、ほどよい脂ののり、よく身にしみこんだ塩味は、ごはんがよく進みます。
ごはん、ワカメの味噌汁、焼き鮭。
これにほうれん草かいんげんのごま和えにお漬物でもあれば、もう完璧な和定食。

子供の頃は魚の日はなんだかテンションが下がって「えー、さかなぁ、、、お肉がええのに。」なんてぼやいていたけれど、大人になって食べる焼き魚は、どこかほっこりしてすごく落ち着くのですよね。
焼きたても旨いけど、冷蔵庫で二日ほったらかしてカラッカラにったような鮭がまたおいしいのだ。
乾いてカリカリになった皮や、皮の裏のゼリーっぽいところ。ああいう旨さはたまらないものがありますね。



焼き魚、和の食卓といえば、日本人のR&Bシンガーの雰囲気がよく合う気がする。

例えば、上田正樹。


この熱い魂を伝えたいんや / 上田正樹とサウス・トゥ・サウス

“むかでの錦三”


ハスキーでちょっと塩辛く、ジューシーとは言わないが、しっかり脂が乗った旨みがある。

この人の場合、ちょっと野暮ったいところ、ニセモノっぽい怪しさがいい。
ソウルに憧れ、黒人になろうとすればするほどににじみ出てしまう日本人っぽさ、そのカッコ悪さがセクシーだと思うのだ。
マッチョなわかりやすいセクシーさではなく、じんわりと浮かびあがるような色気は、冷蔵庫で二日ほったらかしてカラッカラになった鮭みたいに哀しくて旨い。



焼き鮭と並ぶ焼き魚のエース格といえば、焼き鯖。
これは、柳ジョージだ。


Live At Budoukan / 柳ジョージとレイニーウッド

“カモン!チョコレート・ロッカーズ”


ジョージさんの音楽には、こってりと脂が乗ってジューシーで、じっくりと熟成された旨みとおおらかな味わいがある。
ふっくらとした身はとろんとしてほぐれよく、どこか懐かしさを感じるくらいしっくりとなじむ。



上田正樹も柳ジョージも、アメリカのブルースやソウルに憧れ、スタイルだけではなくその魂の部分まで深く入りこんで表現しようとしたシンガーで、10代の頃、彼らの演るカバー曲は、ソウルやブルースを知る上での水先案内の役割を果たしてくれた。

レイ・チャールズの“Georgia On My Mind”


ウィルソン・ピケットの“”6-3-4-5-7-8-9”


一方でホンモノを知って以降は、なんだか野暮ったい二流のソウルごっこじゃないかと思うようになったのも確かだ。
日本人が演る黒人音楽の限界というか、演るほどににじみ出る日本人臭さをカッコ悪いと感じたこともあった。

改めて彼らの音楽をカッコいいと思うようになったのはある程度大人になってからのこと。
野暮ったさの中にある、日本人らしいワビサビ的な感覚というか、日本人にしか演れないソウルやブルースの味わいというか、日常の暮らしと地続きの素朴な感覚が受け入れられるようになった。
大人になって焼き魚の味をおいしいと感じるようになったみたいに、しみじみと、日本人でよかったと思うのだ。


“わがまま”


“バーニング”


すっかりベテランになってからこれらの曲が出た頃は、なんだかものすごくヒット狙いっぽくて醒めた感じで受け止めていたのだけれど、改めて聴くとどちらも上田正樹のパブリックイメージ、柳ジョージのパブリックイメージを体現した良い曲だな、と思う。
歌の向こうに、レイ・チャールズやサム・クック、ウィルソン・ピケットやアルバート・キング、ジョー・コッカーやエリック・クラプトンらが垣間見える。
これぞザ・鮭、ザ・鯖って感じ。
あぁ、飯がうまい。







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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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