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音の食卓〈エビチリ〉

プリップリの海老に、衣にからんだチリソース。
最初はケチャップの甘み、喉元を過ぎてから唐辛子の辛さが追いかけてくる。

海老を最初に食べた人ってすごいよね。
見慣れているから何とも思わないけど、あの生き物の姿って何気にけっこうグロテスクだよ。長いひげ飛び出した目、うじゃうじゃとした脚に堅いんだか柔らかいんだかよくわからない甲羅、少なくとも哺乳類系の生き物とは対極にある。
まさかあの薄い甲羅の下に、あんなにプリップリで甘みのある身があるなんて。
海老を最初に食べた人も偉いけど、茹でたり焼いただけじゃ飽き足らず、あれに衣をつけて、更にチリソースを絡めるなんてことは、一体どこの誰が思いついたんだろう。
プリッとした歯ごたえの海老が、チリソースを纏うことでより甘みが引き立つ気がする。生姜やニンニクが臭みを消してくれる。
旨み、甘み、辛さ、スパイシーさ・・・鶏や豚ではそんなに活きてこないチリソースが海老だとすごく活きている気がするのです。



音楽の世界でも、奇跡的なマッチングというものがあって、例えばレゲエのリズムとソウルフルな歌というのはすごく大好きなマッチングだ。


The Best Of / Toots and The Maytals

トゥーツ&メイタルズのレゲエはめちゃくちゃソウルフルだ。
いわゆるラヴァーズ・ロックと呼ばれたソフィスティケイトされたリゾートっぽいものや、ラップも交えたDJスタイルとは全然違う、ベーシックなリズムとソウルフルな歌。
トゥーツ・ヒバートさんのヴォーカルは、ボブ・マーリーの深みやジミー・クリフの飄々さとも違って。
おそらくオーティス・レディングに憧れたんだろうな。
ウェイラーズが、インプレッションズなどのノーザン系コーラス・グループをルーツに持つとすれば、メイタルズは完全にメンフィス系。
最初からレゲエを目指したのではなく、海の向こう、アメリカのラジオ局から聞こえてくR&Bに耳をそばだてて育った少年がたまたまレゲエと出会った、そういうオリジナリティーがある。



プリップリのリズムに、ピリッと辛くてスパイシーなヴォーカル。
この組み合わせが実にうまい。
旨み、甘み、辛さ、スパイシーさと、プリップリの食感。
心と体の新陳代謝にぴったりだ。

ちなみに、「エビに衣をつけてチリソースをからめる」ことを発明した人はわからないけど、現在親しまれているケチャップベースのエビチリを考えた人は、中華料理人・陳建民さんだそう(陳建一さんのお父さん)。
日本で中華料理店を営むにあたり、上海風四川料理の乾焼蝦仁(カンシャオシャーレン)をアレンジしたレシピが広まったものなのだそうだ。








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Author:golden blue
“日々の糧と回心の契機”のタイトルは、好きな作家の一人である池澤夏樹氏が、自身と本との関わりを語った著書『海図と航海日誌』の一節より。
“日々の糧”とは、なければ飢えてしまう精神の食糧とでもいうべきもの。“回心”とは、善なる方向へ心を向ける、とでもいうような意味。
自分にとって“日々の糧”であり“回心の契機”となった音楽を中心に、日々の雑多な気持ちを綴っていきたいと思います。

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